記事番号:T00027511
Hon Hai Precision Industry Co., Ltd.(鴻海,通称Foxconn)に代表される台湾系代工(だいごん,EMSやODMを包含する中国語)は,なぜシンガポールFlextronics International Ltd.を含めた欧米系企業を抑えて成長できたのか――。その理由として一般的には,台湾人が中国語教育を受けており,中国人従業員の制御に長けていることがよく挙げられる。しかし,筆者はもっと重要な理由が別にあったと考えている。具体的には、台湾系代工が欧米系を超えるビジネスモデル,いわば勝利の方程式を持っていたのだ。
欧米系代工が2000年ころまで大きく成長できた理由は,リストラにあった。顧客となるメーカーの工場を買収した後,元の保有者では難しかった大胆なリストラを実行して採算性を向上させるというものである。ただし,これは顧客を確保できる一方で,想定以上の無用な人材や設備も抱えてしまう場合が少なくなかった。当然,巨額のリストラ費用が発生した。
これに対して台湾系代工は,あくまで自前で製造能力を引き上げた。そして,かつては電卓,ここ20年ほどはパソコンの製造を引き受ける中で,部品の内製化や設計能力の向上に取り組んだ。ポイントは,欧米系が「設計サービスを無償で提供し,その費用を製造委託で回収した」のに対し,台湾系代工は「必ずしも製造委託で回収する必要がなかった」ことである。
その理由を図1に示した。大手台湾系代工が欧米系代工などの他社を優った秘訣は,筐体やその製造に用いる金型,ケーブル,コネクタといった部品事業にある。これらで利益を出せるので設計や製造は原価で引き受けられる。こうした仕組み作りで特に先行するHon Hai社は,Mg合金のリサイクルや精錬,パソコンなどの修理センターの運用なども手掛けている。
Hon Hai社のような事業モデルの課題は,部品事業などに向けた投資額が大きいことである。この克服に一役も二役も買ったのは,高い株価だった。増資はもちろん,株式ボーナスと呼ばれるストックオプションに似た制度によって中堅社員や幹部を,比較的低コストで雇用できた。これらによってHon Hai社の株主資本(=総資産-総負債)は,売上高に迫るほどの速度で増大した(図2)。
最後に,大手代工5社におけるキャッシュフローを見てみよう。売上高の伸びにも関わらず,フリーキャッシュフローがわずかしか増えていない。各社が積極的に設備投資を敢行したり,最大90日後の入金といった支払サイクルの長期化を認めたりしたからだ。支払いサイクルに関しては「(返却の必要がない資産である,株主資本が厚い)Hon Hai社などが,顧客の歓心を買うため代金回収を以前ほど急がなくなったことが業界全体に影響した」(ある代工の幹部)という(図3~4)。
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