台湾系が世界を制した“勝利の方程式”


リサーチ 経営 作成日:2011年1月5日

Y'sの業界レポート

台湾系が世界を制した“勝利の方程式”

記事番号:T00027511

 Hon Hai Precision Industry Co., Ltd.(鴻海,通称Foxconn)に代表される台湾系代工(だいごん,EMSやODMを包含する中国語)は,なぜシンガポールFlextronics International Ltd.を含めた欧米系企業を抑えて成長できたのか――。その理由として一般的には,台湾人が中国語教育を受けており,中国人従業員の制御に長けていることがよく挙げられる。しかし,筆者はもっと重要な理由が別にあったと考えている。具体的には、台湾系代工が欧米系を超えるビジネスモデル,いわば勝利の方程式を持っていたのだ。

 欧米系代工が2000年ころまで大きく成長できた理由は,リストラにあった。顧客となるメーカーの工場を買収した後,元の保有者では難しかった大胆なリストラを実行して採算性を向上させるというものである。ただし,これは顧客を確保できる一方で,想定以上の無用な人材や設備も抱えてしまう場合が少なくなかった。当然,巨額のリストラ費用が発生した。

 これに対して台湾系代工は,あくまで自前で製造能力を引き上げた。そして,かつては電卓,ここ20年ほどはパソコンの製造を引き受ける中で,部品の内製化や設計能力の向上に取り組んだ。ポイントは,欧米系が「設計サービスを無償で提供し,その費用を製造委託で回収した」のに対し,台湾系代工は「必ずしも製造委託で回収する必要がなかった」ことである。

 その理由を図1に示した。大手台湾系代工が欧米系代工などの他社を優った秘訣は,筐体やその製造に用いる金型,ケーブル,コネクタといった部品事業にある。これらで利益を出せるので設計や製造は原価で引き受けられる。こうした仕組み作りで特に先行するHon Hai社は,Mg合金のリサイクルや精錬,パソコンなどの修理センターの運用なども手掛けている。 図1 台湾系代工の勝利の方程式。欧米系代工は一般に,台湾系に比べて設計サービスに重きをおいていないので,図中の製造専門業者に該当する。なお中国大陸でも,台湾系代工と同様なビジネルモデルを採る企業が出始めている。代表例は中国BYD(比亞迪) Co., Ltd.のEMS部門だ。

 Hon Hai社のような事業モデルの課題は,部品事業などに向けた投資額が大きいことである。この克服に一役も二役も買ったのは,高い株価だった。増資はもちろん,株式ボーナスと呼ばれるストックオプションに似た制度によって中堅社員や幹部を,比較的低コストで雇用できた。これらによってHon Hai社の株主資本(=総資産-総負債)は,売上高に迫るほどの速度で増大した(図2)。

図2  株主資本ではHon Hai社が他を圧倒。左に代工5社の株主資本の推移を占めした。 左はHon Hai社における売上高と株主資本の伸び率である。ともに2007年度まで高率だった。なお株主資本は,純資産とも呼ばれている。 Flextronics社の決算は3月締め,ほかは12月締め。台湾ドル→円の換算レートは2001年度以降それぞれ 3.60,3.63,3.37,3.24,3.42,3.58,3.58,3.27, 2.83。米ドル→円の換算レートは121.40,125.02,115.73,108.07,109.93, 116.30,117.63,103.11,93.43。

 最後に,大手代工5社におけるキャッシュフローを見てみよう。売上高の伸びにも関わらずフリーキャッシュフローがわずかしか増えていない。各社が積極的に設備投資を敢行したり,最大90日後の入金といった支払サイクルの長期化を認めたりしたからだ。支払いサイクルに関しては「(返却の必要がない資産である,株主資本が厚い)Hon Hai社などが,顧客の歓心を買うため代金回収を以前ほど急がなくなったことが業界全体に影響した」(ある代工の幹部)という(図3~4)。

図3 代工5社のフリーキャッシュフローの推移。Quanta社における2005年度(▲4231億円)と2006年度のフリーキャッシュフローが大きくマイナスになった背景には,傘下の液晶パネル会社の不振があった。Quanta社は同パネル会社を2006年に台湾AUO(友達)社に売却している。図4 代工5社の投資キャッシュフローの推移。Quanta社における2005年度の投資キャッシュフローは▲4628億円,Hon Hai社における2007年度のそれは▲3617億円。


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