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【ワイズリサーチ】世界の金属工作機械輸出国の貿易競争力と
台湾工作機械産業の現状


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2014年4月30日

機械業界 電機機械

【ワイズリサーチ】世界の金属工作機械輸出国の貿易競争力と
台湾工作機械産業の現状

記事番号:T00062623

一.基本紹介

 台湾の機械産業において金属加工工作機(工作機械)産業は最大の生産額を誇っており、さらに生産額の75%以上を海外向け製品が占めている。また台湾は世界第六位の工作機械生産地であり、国際市場において重要な影響力を持っている。グローバル化時代の今、台湾は日本、ドイツ、イタリア、米国、スイスといった工業強国、さらには韓国と中国などの新興国と競争しなければならない。

 2012年の調査では、工作機械生産国のうち最も競争力があったのは日本である。その貿易特化係数(Trade Specialization Coefficient、TCもしくはTCS)は0.8を上回っている。次いで台湾が0.73で2位、3位は0.5以上を維持しているドイツである。なお台湾の競合国である韓国は0.24であった。


二.主要工作機械輸出国の貿易特化係数

 TC係数は産業の国際競争力を分析する指標で、世界市場において生産国がどの程度の競争力を備えているかを反映している。係数が0の場合、該当製品の競争力は世界水準と同等であることを意味する。係数が1に近づけば近づくほど競争力が強く、逆に0を下回ると競争力が弱いということになる。

 以下、各国の競争力について製品分野ごとに説明する。

▽金属加工機械(工作機械)
 国際競争力が最も強い国は日本である。TC係数のベースは常に0.8以上で、現在は0.9前後まで伸びている。ドイツは0.5以上を維持している。一方、米国のTC係数は10年に0.07まで落ち込んだ後、輸入製品の大幅増加に伴い低迷が続いている。中国は金融危機の打撃を受けて09年から低迷しており0.7近くまで落ちこんでいる(図1参照)。



▽工作機械部品
 07年にはほぼ同等だった日本とドイツのTC係数だが、徐々に日本がドイツを上回ってきている。米国のTC係数は10年から輸入需要の拡大とともに急落、現在では世界水準を下回っている。また中国は金融危機の影響により0.3前後まで落ちこんでいる(図2参照)。


▽ハイエンドCNC制御装置
 ドイツの競争力が比較的強くTC係数は0.7に近い。日本は0.4前後で低迷が続いており、米国は大きな変動がない。中国は07年の0.3から12年には0.04まで大幅に上昇している(図3参照)。

▽試験設備
 ドイツと日本のTC係数は同水準で、米国は小幅に上昇している。中国は世界平均を下回っているものの上昇傾向が続いている(図4参照)。


▽モジュール、工具、刃具
 この製品分野では日本のTC係数が0.73の最高値を記録している。ドイツは0.35前後、また米国は金融危機以降大幅に下降している。中国のTC係数は世界水準に近づいてきている(図5参照)。

三.台湾工作機械産業の国際競争力

 工作機械は、台湾ブランドとして世界市場への進出を果たした数少ない台湾製品の一つである。また海外技術への依存度が低く、独自の技術力を備えている産業でもある。さらに高度なカスタマイズ製品製造に対応可能な上、迅速かつフレキシブルな生産力を持ち、メーカー各社は主に中小規模で特定地域に集中しているため分業システムが整備されているという利点がある。

 台湾工作機械産業も金融危機の打撃を受けたが、10年には生産額が前年比50%以上増の約40億米ドルと大幅成長し、他の国より先んじて回復の一歩を踏み出した。11年の生産額は同29%増の50億米ドルに達し、日本、ドイツ、中国、韓国、イタリアに続く工作機械生産地となった。しかし12年になると、▽中国の経済減速による軟着陸▽欧米経済の回復不調▽韓国の米国/EU(欧州連合)とのFTA——といった要因により、生産額の伸び幅は縮小した。

 台湾工作機械産業の国際競争力は世界水準を上回っている。TC係数は金融危機後の12年には0.73まで大幅に成長。ドイツに匹敵するまでに伸びたものの、まだ日本の水準には届いていない(図6参照)。


四.台湾工作機械産業の動向

 世界の工作機械市場の競争はますます激しくなりつつあり、台湾工作機械業界は加工製品の多様化・複合化を目指して産業の高速化と実用化を加速させている。国際競争力の向上のため製造技術の改善と部品のモジュール化、あるいはキーテクノロジーとキーコンポーネントの研究開発を台湾で行うことによってコストダウンを図り、低価格化かつ高性能な製品の生産を目指さなくてはならない。

 台湾工作機械産業における、▽産業クラスター▽研究開発▽分業システム▽サービスシステム——をつなぐサプライチェーンは、他国より優れている。高い専門性を持つ分業システムとフレキシブルな対応能力こそが国際市場における競争力の源である。

 現在、ローエンド工作機械市場では韓国と中国の台頭が台湾に脅威を与えているが、台湾メーカーは高コストパフォーマンス製品で競争優位性を保っている。また、欧米及び日本製品が主流であるミドルエンド工作機械市場においても、台湾は市場進出を目指して高付加価値製品の開発に取り組むべきである。産業全体の水準向上を続けてこそ、国際市場での確かな地位を得ることが可能なのである。

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