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【ワイズリサーチ】台湾機械産業の2015年概況


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2015年12月3日

機械業界 工作機械・産業機械

【ワイズリサーチ】台湾機械産業の2015年概況

記事番号:T00062956

1.工作機械

 2015年は中国で機械産業が急激に発展し、高い付加価値と高い技術に基づく産業構造の最適化が急務となっている。これによりミドル〜ハイエンド機械の需要が小幅に増加する傾向となる見通しだ。また、米国では自動車部品および航空産業における工作機械需要が高まっており、特に金属切削工作機械の市場規模は88億2,000万米ドルに上り、台湾工作機械産業の輸出額を押し上げると見込まれる。ただ、以下の6点が留意すべき点として挙げられる。

(1)欧米、日本メーカーが「ハイエンド機種の低価格化」戦略により中国におけるロー〜ミドルエンド製品市場の開拓を進めている。


(2)米韓および欧州連合(EU)・韓の自由貿易協定(FTA)締結の影響を受け、台湾と韓国の間で欧米向け輸出における関税率に2〜5%の格差が生じている。


(3)中国における工作機械製品の在庫水準上昇と生産能力過剰、さらに製造業の成長鈍化を受けてロー〜ミドルエンド製品の輸入が減少している上、生産能力と在庫の過剰の解決策として東南アジアなど国際市場が利用されている。


(4)原油価格の下落および米国の量的緩和(QE)政策終了に影響を受け、アジアの新興国市場および東南アジア市場の需要が下降すると予測される。

(5)米国製造業の回復力は予測されたほどの力強さを見せておらず、このため工作機械市場の需要も小幅に低下する見通しとなっている。

(6)日本円及びユーロの対米ドルレート下落が日本および欧州のメーカーと台湾メーカーの製品に価格差縮小をもたらしており、台湾メーカーの受注や製品価格に影響を及ぼしている。

 こういった点を考慮した上で全体的に見ると、台湾工作機械産業の今年第4四半期生産額は前年同期比20.3%減の317億4,000万台湾元、通年では1,352億台湾元と前年比10.4%のマイナス成長に陥ると予測される。

2.ハイテク産業向け生産設備

 ディスプレイ製造設備業界では、中国における次世代液晶パネル工場の建設が続いていることから、売上成長が見込まれる。なお北米半導体製造設備業界における出荷受注比率(B/Bレシオ)は今年7月が1.02、8月は1.06となっており、第4四半期の業界景気は小幅に下降すると予測されている。一方、ディスプレイ製造設備業界のB/Bレシオは7月が1.89、8月は1.92、9月は2.01となっており、第4四半期の景気好調が見込まれる。台湾ハイテク産業向け生産設備産業の第4四半期生産額は前期比5.0%減、前年同期比11.5%減の309億3,000万台湾元と予測される。

 ファウンドリー世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は今年の世界半導体産業の成長率について当初予測の5%から4%、3%へと四半期ごとに下降修正し、現時点ではゼロ成長見通しを示している。主な要因としては(1)末端需要の低下、(2)米ドル高による販売への影響、(3)中国の経済成長鈍化――を挙げている。こういった中、半導体大手の米インテルは今年の設備投資を当初の100億米ドルから87億米ドル、さらに73億米ドルまで引き下げた。一方、TSMCも同様に当初の115億〜120億米ドルから105億〜110億米ドルに引き下げた後、さらに10月には80億元に下方修正しており、半導体製造設備メーカーの売上高減少につながっている。


 一方、フラットディスプレイ産業についてはスマート型モバイル端末の販売増、超高解像度4K2Kテレビの市場浸透率上昇、車載ディスプレイ需要の高まりといったプラス要因を受け、2015年の世界ディスプレイ製造設備販売額は前年比14.4%の増加を記録すると予測される。また中国で次世代液晶パネル工場の建設が続いていることに恩恵を受け、台湾の関連設備メーカーも今年は成長を維持すると見込まれる。

3.運搬・自動化機械

 2015年、米国の「先進製造パートナーシップ(AMP)」、韓国の「製造業革新3.0戦略」、日本の「インダストリー4.1J」、中国の「中国製造2025(メード・イン・チャイナ2025)」など、各国の政府や民間機関がインテリジェント化を進める中、神達電脳(マイタック・インターナショナル)傘下の宇達電脳(上海)は中国において企業向けクラウドサービスを展開。研華科技(アドバンテック)はモノのインターネット(IoT)およびスマートシティの分野で発展を図るとともに江蘇省昆山のプリント基板(PCB)メーカーや組み立てメーカーにスマートファクトリーを導入している。


 また友嘉実業集団(フェアフレンドグループ)、永進機械工業(YCM)、百徳機械(クアサー・マシン・ツールズ)、崴立機電(WELEメカトロニック)といった主要工作機械メーカーは経済部技術処の指導の下、台湾初となる切削加工におけるびびり振動の研究を目的とする共同実験室を設立し、国産のスマート型オンライン監視・制御ソフトウエアの開発を進めている。


 徳律科技(TRI)はパナソニックのスマートファクトリー・ソリューション「PanaCIM」の技術認証プロジェクトに参加。アドバンテックと和椿科技(オーロテック)もパナソニックとインダストリー4.0関連の商機獲得に向け、提携の覚書(MOU)を交わした。今後、スマート設備に内蔵されたコンピューターベースのスマート制御装置と、イーサネットベースのフィールドバスシステム「EtherCAT」規格のサーボモーターに関する協力を進める計画だ。

 この他、台達電子(デルタ・エレクトロニクス)、羅昇企業(エースピラー)、盟立自動化(Mirle Automation)、広運機械工程(ケンメック・メカニカル・エンジニアリング)といった台湾の自動化メーカーが積極的に中国市場の開拓を進めているが、商機の獲得には技術革新とシステム統合を加速することが必須となる。

 季節的要因により出荷が旺盛となること、また業界メーカーがスマート化/自動化商機の開拓に積極姿勢を見せていることが背景となり、台湾運搬・自動化機械産業の第4四半期生産額は前期比39.5%増の154億4,800万台湾元と予測される。


 

4.産業用ロボット

 台湾産業用ロボット産業の2015年1〜8月の輸入額は前年同期比14.9%増の7,146万米ドルとなった。主な輸入先国は上位から日本、中国、ドイツだった。うち日本からの輸入は15%、中国からは110%の成長を記録した。成長要因としては日本円相場の下落及び現地メーカーの急速な生産拡張、そして台湾のロボットメーカーが相次いで中国に生産拠点を構えたことが挙げられる。


 一方、当産業の15年1〜8月輸出額は同4.4%減の5,404万米ドルだった。うち日本向け輸出は179万米ドルで同59%減。中国向け輸出も同9.2%のマイナス成長となった。なお2015年通年の輸出額は小幅成長または前年(8,489万米ドル)同水準が予測されている。


 世界の経済貿易環境が大きな変化を見せる中、台湾メーカーは緊急に短納期発注へ対応可能な出荷能力を備えることが必須となっており、でなければ貿易自由化政策のメリットを受けられない台湾メーカーが日本や韓国の機械製品と戦うことは困難な状況だ。

5.金型

 台湾金型産業の第3四半期輸出額は、例年の需要期を迎えたこと、およびブラジル市場での需要が大幅に増えたことにより安定した水準を維持している。第4四半期生産額も150億台湾元と小幅ながらプラス成長を維持すると予測される。また2015年通年の生産額は590億台湾元、輸出額は211億台湾元とこちらも小幅成長が見込まれている。


 台湾の金型産業は中国や韓国メーカーの値下げ攻勢によりミドルエンド製品で受注を失っている他、長引く円安傾向を受けて日本顧客が自国製の金型を採用していることが台湾金型メーカーの輸出に影響を及ぼしている。中韓メーカーとの価格競争や円安による打撃といった状況は今後も続くと見込まれるが、高い技術力を備えた金型メーカーは受注に影響を受けていないことから、台湾の金型メーカーにはアップグレードが求められると言える。また台湾金型産業の競争力は生産とサービスの一貫提供を強みとしているため、業界で垂直統合を進めることも現状打破の方策の一つと認識されている。

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