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【ワイズリサーチ】工作機械の重要部品——
ボールねじの現状と今後の発展


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2015年12月31日

機械業界 工作機械・産業機械

【ワイズリサーチ】工作機械の重要部品——
ボールねじの現状と今後の発展

記事番号:T00063578

 ボールねじはナットとねじ軸の間にボールがあり、ボールが転動することでナットとねじ軸が滑り、接触運動に転換する。そしてナット内のボールにより、直線運動を回転運動または回転運動を直線運動に変換され機械に伝わる。ボールねじはねじ軸とナットから構成される。ねじ軸は一般的にクロムモリブデン鋼やハイカーボンクロム鋼で作られる。またさび防止のためステンレス素材も使用される。特殊な環境に対応するため、エンジニアリング・プラスチックがねじ軸やナットの材料になることもある。リターンチューブは合金鋼材を曲げて作られ、ステンレス製のものもある。チューブ止め板はハイカーボン鋼、与圧がある場合は与圧プレートもハイカーボン鋼が用いられ、さび防止にステンレスが使われることもある。ワイパーとダストカバーはゴムやエンジニアリング・プラスチックで作られることが多い。ボールは日本精工(NSK)、NTN、日本エスケイエフ、FAG、ツバキ・ナカシマ、天辻鋼球製作所など専門メーカーの製品が使用される。そして潤滑油口はステンレス製が多い。

 ボールねじの産業構造は、川上の原材料にねじ軸、ナット、ボール、リターンチューブ、ワイパー、チューブ止め板、ダストカバー、潤滑油口、シムなどがある。川下の応用産業には、航空宇宙、産業機械、船舶機械、自動車産業、輸送機械、半導体設備、医療機器、工作機械、光学産業、電子受動部品産業などがある(図1参照)。

 工業技術研究院(工研院)の産業経済趨勢研究センター(IEK)によれば、2015年の世界ボールねじ生産額は、世界的な自動化需要の高まりから前年比1.2%増の18億3,300万米ドルとなる見通しだ。市場需要の拡大と応用産業の成長に伴い、17年の生産額は18億9,000万米ドルに達すると予測される(図2参照)。

各国ボールねじ輸出状況の分析
 日本はTHK、NSKなど大手メーカーを有するボールねじ大国である。2014年の輸出額は388億500万米ドルだった。世界第2位は欧州連合(EU)で、主要メーカーにはドイツのSTAR、INA、NEFF、スイスのシュネーベルガーなどがある。14年の輸出額は1億6,900万米ドルだった。台湾のボールねじ輸出は世界第3位で14年の輸出額は1億3,200万米ドル、前年比19.34%成長した。台湾の輸出相手国上位3カ国は中国、日本、韓国である。

 2010年は比較対象となる09年が世界金融危機の影響を受けたため、各国のボールねじの輸出額はいずれも大幅に成長した。このうち台湾の成長率が最も高く前年比161.4%だった。中国は127%、日本は70.3%であった。12年は中国市場の成長鈍化に加えて、米国の景気回復が予想を下回ったことから台湾、日本、中国をはじめ各国の輸出額は減少した。12年のボールねじ輸出額は台湾が前年比36.8%減、日本が15.1%減、中国が11%減だった。EUも12年以降、輸出額の減少傾向が続き、14年の輸出額は同15.1%減となった。

 2013年における全世界のボールねじ輸出額のうち、上位3カ国・地域のシェアは▽日本、44%▽EU、23.7%▽台湾、13.5%――であった。14年の世界輸出額では、日本のシェアは45.2%に上昇した一方、EUは19.7%に減少した。台湾は中国市場での需要増を受けて14年は15.4%に上昇した。なお14年の米国シェアは5.8%、中国は6.1%であった。14年に台湾のボールねじ大手各社が海外に新拠点を設置したため、15年の世界シェアは拡大が期待される(図3参照)。

台湾ボールねじ産業の現状と今後の発展
 台湾ボールねじ産業の輸出相手国主要5カ国は、中国、日本、韓国、ドイツ、インドである。このうち対中国が最大で、直近4年間の台湾ボールねじ総輸出額に占める割合は、▽2011年、44.73%▽12年、38.82%▽13年、46.34%▽14年、49.73%――であった。台湾のボールねじ産業は09年の世界金融危機の後、12年には中国市場の成長鈍化、軟着陸の影響を受けて輸出額が前年比36.34%減の29億2,000万台湾元まで落ち込んだ。金融危機後の2年間は、10年が32億4,000万台湾元(同161.3%増)、11年が45億9,000万台湾元(同41.86%増)とプラス成長が続いていた。13年は対米国輸出額が小幅に減少したほかは、その他各国への輸出額はそろって成長した。対中国輸出額は同38%増となり台湾ボールねじ輸出の成長を押し上げた。14年は対ブラジル輸出額が小幅減少したほかは、その他各国への輸出額はそろって成長した。対中国輸出額は同28.1%増であった。

 ボールねじの輸入額について、世界金融危機の影響を受けた2009年は前年比56.17%の1億9,000万台湾元となり大幅減少した。10年は金融危機の影響を脱し、輸入額は6億6,000万台湾元(同246.31%)、11年は7億7,000万台湾元(同16.62%増)となった。12年と13年は中国市場の成長鈍化、軟着陸の影響を受けてそれぞれ3億9,000万台湾元(同49.36減)、3億6,100万台湾元(同7.53%減)に落ち込んだ。なお14年の輸入額は4億1,600万台湾元で同15.19%増であった(表1参照)。

 2014年における台湾ボールねじ産業の輸入相手国上位3カ国は中国、韓国、日本であった。輸出額のシェアはそれぞれ49.73%、11.50%、10.39%だった。また主要輸出相手国上位3カ国は日本、中国、ドイツで、輸入額のシェアはそれぞれ83.78%、5.81%、2.97%となった(表2参照)。


台湾ボールねじの競争力を維持
 近年、航空宇宙、自動車工業、金型製造、光電工程、計器・メーターなどボールねじの応用産業で、高速・高精度・高品質の加工が要求されている。高速かつ高精度の加工を実現するため、機器構造の剛性を強化するだけでなく、高速主軸システムと高速フィードシステムが必要である。現在、ボールねじ生産は日本、米国、ドイツ、スイスなど先進国が主であり、高い技術を持つだけでなく世界的に広く販売されている。例えば日本のTHK、NSK、日本トムソン、日本ベアリング、ツバキ・ナカシマ、ユニオン精密、不二越、ドイツのSTAR、INA、NEFF、米国のトムソン、スイスのシュネーベルガーなどいずれも世界的に知られたメーカーだ。

 台湾ボールねじの世界シェアは近年拡大しつつある。また中国は産業転換を行い、ボールねじ等の重要部品に対しても、そして高速・重量精密ボールねじ、直線ガイド設計技術等にも要求が高まっている。また自動化生産、スマート製造が盛んになる中、ボールねじなど重要部品もスマート化が進んでいる。台湾ボールねじメーカーは、世界市場における競争力を保つために製品と生産技術の向上に努め、海外メーカーとの技術提携などを行うべきだ。

 

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