リサーチ マーケティング 台湾事情 作成日:2017年10月26日
機械業界 ポンプ・コンプレッサー・コルク・バルブ記事番号:T00073580
一、真空ポンプの定義
真空ポンプは真空装置の心臓部であり、特定空間内のから気体を排出し、真空環境を得るためのポンプである。▽機械式ポンプ▽液体ジェットポンプ▽蒸気ジェットポンプ▽イオンポンプ▽クライオポンプ——などの種類が挙げられる。
また、作動原理から気体輸送式真空ポンプと気体溜込式真空ポンプの2つの種類に分けることが出来る。
1.気体輸送式真空ポンプ:
2つのポンプを用意し、1つは高真空領域を作り出すため、高真空まで排気できるポンプ(高真空ポンプ)、もう1つは高真空ポンプの排気側から気体を大気圧に排気するポンプ(低真空ポンプや粗引きポンプと呼ばれる)と連動させることにより、高真空領域を作り出す。
2.気体溜込式真空ポンプ:
真空ポンプの中に吸気側から入ってくる気体を溜め込み、物理吸着や化学吸着の方法で気体分子を捕える。また、プラスイオン、電子、放射線などの作用により気体をイオン化させ、高電圧または磁場を利用して吸着させる。気体分子を極低温面に凝縮させて捕捉するタイプも気体溜込式真空ポンプに属する。
二、主要メーカー
真空ポンプの主要生産メーカーは日本と欧米地区に集中しており、製品別から見ると、ドライポンプの筆頭メーカーはイギリスのエドワーズ(Edwards)であり、近年は薄膜トランジスタ液晶(TFT-LCD)、半導体と太陽光発電など産業を主要応用分野とし、米国、日本と韓国を生産拠点構え、アジア地区の売上高は全体の5割以上を占めている。
日本の樫山工業は世界2位の真空ポンプメーカーであり、同じく半導体とTFT-LCD産業を主要応用分野とし、2009年の売上高は300億日本円を超え、日本最大の真空ポンプメーカーで、日本シェアの7割を占めている。10年は台湾の越頂科技(TVC)と提携し、6億台湾元を投資して台湾の中部科学工業園区工場を設置して、樫山工業の部品生産・出荷基地として、中国、韓国、シンガポール、マレーシアと米国を主要供給先とする。
三、市場分析
1.生産概況
経済部統計処の工業生産統計資料によると、2016年台湾地区の真空ポンプ生産台数は9万台に達し、前年同期比25%増、生産額は同13%増の11億8,000万台湾元となった。しかし一方、製品の平均価格は前年同期比9%減の1万3,000台湾元となった(図1参照)。
2.輸出入概況
2016年台湾真空ポンプの市場規模は前年同期比23%増の62億2,000万台湾元に達した。現状では、台湾メーカーは真空ポンプの生産能力を有するが、生産量は台湾市場を満足させることができないため、台湾真空ポンプ市場の輸入依存度は99.7%に達している。
真空ポンプの輸入については、2008〜09年はリーマンショックの影響で関連需要の不振が深刻で、半導体・パネル産業メーカーの生産額は大幅減少したうえ、工場の拡張計画も先送りされたため、09年の真空ポンプ輸入額の減少幅は5割弱となった。 2010〜11年の景気は緩やかな回復を示し、台湾ハイテク電子産業の設備投資額は明確な成長を見せ、関連部品の輸出・輸入額はそろって大幅成長となった(図2参照)。
輸入については、2016年台湾地区の真空ポンプの輸入台数は前年同期比25.4%減の32万7,000台となったが、輸入額は同22.7%増の62億300万台湾元となり、平均輸入価格は1万8,978台湾元となった。
輸出については、2016年台湾地区の真空ポンプの輸出額は前年同期比11.9%増の11億6,000万台湾元、輸出台数は同55.5%増の43万台とそろって成長したが、平均輸出価格は2,680台湾元となり、前年同期と比べて1,043台湾元と減少した。
3.主要輸出入相手国
主要輸入相手国のうち、日本は長年間1位を維持しており、2016年の輸入額は前年同期比23%増の25億9,000万台湾元で、全体の41.8%を占めている。2位の韓国については、16年の輸入額は同59.1%増の16億1,000万台湾元で、全体の25.9%を占めている。3位のドイツからの輸入額は同4.7%減の4億5,000万台湾元で、全体の7.3%を占めている。トップ3位の輸入相手国からの輸入額は合計全体の75%を占めている。
主要輸出相手国については、中国は依然として主要輸出相手国の1位で、2016年の輸出額は前年同期比76.4%増の4億4,900万台湾元、全体の38.7%を占める。2位の米国への輸出額は同22.5%減の1億1,400万台湾元、全体の9.8%を占めている。3位のマレーシアへの輸出額は同14.6%増の1億600万台湾元、全体の9.2%を占めている。トップ3位の輸出相手国への輸出額は合計全体の57.7%を占めている。
四、まとめ
近年では、台湾はアジア圏有数の半導体のODM(相手ブランド先で設計・製造)基地とTFT-LCD生産基地であるため、真空システム関連部品への需要は高いと予想されている。真空システム関連部品は生産難度が高めのうえ、外国の大手メーカーに特許や販売ルートを把握されている。また、エンドユーザーは製品品質と歩留り率を確保するため、外国製の部品を選択するものが多い。台湾メーカーの市場参入の大きな壁となった。今後の方針として、外国大手メーカーとの技術提携、川下メーカーとの信頼関係の構築により、台湾メーカーの技術向上と市場開拓を実現する。
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