記事番号:T00097655
一、産業概況
省エネ・温室効果ガス削減への意識が世界的に高まり、各国がカーボンニュートラルを中長期の目標とする中、石炭燃料を使用しない電気自動車(EV)が次世代自動車としてメーカー各社の研究開発の重点となった。大手メーカーはすでにEVの開発を進めており、EV産業は今後10年で大幅成長する産業のひとつになると予測される。EV出荷台数は2025年に850万台(20年は約200万台)、30年に2,600万台、40年に4,500万台へと成長する見通しだ。
二、EVプラットフォームの開発が今後のトレンド
自動車産業のEVシフトのトレンドに対し、多くの自動車大手メーカーは研究開発と製造の共通プラットフォームの設置に力を入れている。共通の部品とシステムの比率を高めることで新車種開発のコストダウンを図ることができるだけでなく、多くの部品が共通規格になれば生産効率も向上する。例えば、トヨタ自動車が開発したプラットフォーム「TNGA」は、同グループ内の部品共通性を50%まで引き上げたため、新車種の開発速度を大幅短縮することができた。
現在、▽フォルクスワーゲン、▽アウディ、▽トヨタ自動車、▽ヒュンダイのほか一部の新規自動車メーカーが、専用のEV用プラットフォームを展開している。また、同じグループ傘下の異なるメーカー同士がプラットフォームを開発する動きも出てきている。
三、台湾のEV産業の動向
長年、台湾の自動車産業は自動車部品の研究開発、製造及び自動車の組み立てに重点を置いてきたため、新車種の研究開発能力や製造能力は相対的に弱い。2021年、鴻海精密工業はEV需要の増加に対応するため、傘下の鴻華先進科技(裕隆集団との合弁会社)や蔚來汽車(NIO)を含むメーカーとEV用プラットフォーム「MIH聯盟」を立ち上げた。各分野のハードウエア及びソフトウエアメーカーがパートナーシップを結び、台湾のEV基準を発展させることが目標だ。
MIH聯盟は参加メーカー数が多いため、同じ製品やサービスでもメーカーによって性能や価格に差があるか、もしくは製品のコストパフォーマンスや実用性を重視するメーカーがあるため、相互補助的な効果が生まれ、顧客に多元的な選択を提供するだけではなく、メーカーに良性的な競争の場を提供することができる。
しかし、世界の大手自動車メーカーの方針と比べて、MIH聯盟は幅広い業務をカバーしているため、目的が不明確となってしまう可能性がある。これについて、2つのアドバイスを以下に示す:
1.今後のビジョンと担当する任務を明確にして専門技術を効率的に蓄積する
MIH聯盟は多くのメーカーが参加しているものの、EV用プラットフォームとしてのポジションや担当する任務が明確になっていない。EVの研究開発のみに力を入れるのか、もしくは多元化なサービスを提供するプラットフォームにするのかを明確すれば、専門技術人材の振り分けや技術の蓄積がスムーズに行える。
2.EV用プラットフォームの設計規格とコンセプトを確立する
世界の大手自動車メーカーや新規自動車メーカーのプラットフォームは、設計規格とコンセプトについて明確な方針を確立している。一方、MIH聯盟はコンセプトカーは発表したものの、具体的な設計規格は不明確なままであるため、EV用プラットフォームの設計規格とコンセプトを早急に確立させるべきだ。これにより、研究開発の資源分配がスムーズに行えるだけではなく、世界のEV用プラットフォームとの提携を検討することができる。
台湾は新車種の研究開発能力と製造能力は相対的に弱いものの、長年蓄積してきた自動車部品製造能力と自動車組立能力を活用できれば、EV産業の発展を大きく進められるはずだ。MIH聯盟の参加メーカーの役割とプラットフォームの設計規格を早急に確立することで、台湾のEV産業の永続的な発展につながるだろう。
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