ニュース 法律 作成日:2023年8月28日_記事番号:T00110784
知っておこう台湾法台湾では30年ほど前から、選挙時に特定の候補者を当選させる目的で居住実態のない虚偽の戸籍移転により投票権を取得する、いわゆる「幽霊人口」投票の問題が指摘されています。
台湾の刑法第146条では、このような「幽霊人口」投票を禁止しており、違反した場合、5年以下の有期懲役に処されます。
同罪に関し、2018年に居住実態がないにもかかわらず投票権を得る目的で桃園市に戸籍を移した罪で、懲役3月、執行猶予2年の判決を受けた人物らが、憲法法廷に関連する法律の規定および刑事判決についての憲法審査を申請していた件について、2023年7月28日、憲法法廷はこれらが憲法に違反しない旨の判断を下しました。
判決の主な理由は以下のとおりです。
1. 刑事規範により、虚偽の戸籍の移転により投票権を取得する行為を禁止することは、人民の選挙権の行使を制限するものであるが、当該規定は、選挙の民主的正当性および公正性という特に重要な公共の利益を守るためのものであるから、比例原則(実現すべき合法的な目的とその手段としての権利・利益の制約との間に均衡を要求する原則)に違反せず、また、憲法第17条の選挙権および第7条の平等権にも抵触しない。
2. 形式上、虚偽の戸籍移転による投票行為を処罰しているが、実質上、人民が自由に居住地を選択し、移転する等の権利を制限しておらず、人民が戸籍地を選択し、登記する権利は影響を受けていないため、憲法第10条により保障される居住移転の自由とは関係がない。
3.「虚偽」(中国語:虛偽)、「戸籍移転」(中国語:遷徙戶籍)等の用語は、日常生活用語であり、かつ多くの法律においても使用されており、一般人でも理解できるため、明確性の原則に抵触しない。
なお、日本の公職選挙法第236条では「幽霊人口」投票行為に相当する場合の法定刑は、6月以下の禁錮、又は30万円以下の罰金とされているので、台湾は「幽霊人口」投票行為に対する刑罰が非常に重いといえます。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
福田優二弁護士
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