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第544回 台湾法上の勾留/台湾


ニュース 法律 作成日:2024年11月4日_記事番号:T00118416

知っておこう台湾法

第544回 台湾法上の勾留/台湾

 前台北市長で現台湾民衆党の党首、柯文哲氏が2024年9月5日、「京華城」跡地開発をめぐり争いとなった事件により、台北地方裁判所の勾留決定を受けたことは、台湾社会の大きな注目を集めました。

■一般的勾留と予防的勾留

 いわゆる「勾留」は、台湾法上、次の二つに分けられます。

一、一般的勾留

 一般的勾留とは、訴追、裁判または刑罰の執行が円滑に行われるようにするための保全手段を指します。刑事訴訟法(以下「本法」といいます)第101条では、被告人の犯罪の嫌疑が重大でかつ次の三つの条件を満たすとき、裁判官は被告人を勾留することができると定めています。柯文哲はこれに該当しています。

1、逃亡したまたは逃亡するおそれがあると判断するに足りる事実がある場合

2、証拠を隠滅、偽造、変造したり、共犯者または証人と共謀したりするおそれがあると判断するに足りる事実がある場合

3、死刑、無期懲役または軽くても本刑が5年以上の有期懲役の罪を犯し、逃亡、証拠を隠滅、偽造、変造したり、共犯者または証人と共謀したりするおそれがあると判断する相当の理由がある場合

二、予防的勾留

 予防的勾留は犯罪を予防する措置であり、本法第101条の1に定められている放火、性犯罪、傷害、殺人など特定の犯罪にのみ適用されます。被告人が特定の犯罪を繰り返し実行する可能性があり、かつ社会に危険をもたらす可能性があることを示す十分な証拠がある場合、裁判所は、再犯防止のために当該被告人を勾留する決定を下すことができます。

■最長5年未満

 勾留期間については、本法第108条の規定により、事件起訴前の勾留期間は最長4カ月であるため、検察官が裁判所に被告人の勾留を請求し許可を受けた場合、当該検察官は4カ月以内にその事件の調査(被告人に対する起訴または不起訴の決定)を完了する必要があり、そうしない場合、当該被告人は釈放されます。起訴後の勾留期間については、罪名の重さおよび審級によって異なりますが、合計で5年を超えてはなりません。

 勾留は法律上、被告人の身体の自由を一時的に拘束することであるにすぎず、被告人に罪があることを意味するものではありません。とはいえ、近年、裁判所は勾留事件について厳しい審査基準を採用しており、つまり、被告人の犯罪の嫌疑は極めて高いと判断した場合に限り、裁判官は勾留を認めるため、勾留される被告人が最終的に無罪判決を受けた事件はそれほど多くありません。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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