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第40回 「配偶権」の侵害に対する法的責任


ニュース 法律 作成日:2014年2月17日_記事番号:T00048662

知っておこう台湾法

第40回 「配偶権」の侵害に対する法的責任

  新北地方裁判所は2013年11月19日付で作成した13年度訴字第1979号判決において、夫婦のいずれか一方の行為が夫婦間の共同生活における円満・幸福を破壊するに足り、情状が重大な場合、姦通または相姦の行為ではなくても、かかる行為は他方の「配偶権」を侵害しており、被害を受けた他方は加害した配偶者および共同で侵害行為を行った第三者に対して精神的損害に対する賠償金の支払いを要求できると指摘した。

夫の「準・不倫行為」が発覚

 本件の概要は次のとおりである。

 甲、乙は夫婦関係にあり、乙は、自らの夫甲と女性丙との間に▽互いに「愛人」、「老公老婆」(いずれも中国語で夫婦間での愛称)と呼び合う▽2人で何度も単独で旅行に行き、温泉に入り、かつ撮影した写真において常に抱き合っている▽電話、ショートメッセージの内容に多くの暗示的な情報が含まれていた──などの通常の友人を超えた正常ではない交友関係があることに気付いたため、甲丙の2人が乙の配偶権を共同で侵害したと主張して訴訟を提起し、甲丙の2人が精神的損害に対する賠償金を連帯して支払うことを要求した。

配偶権の共同侵害は成立

 民法第184条第1項の前段は「故意または過失により、不法に他人の権利を侵害した場合、損害賠償責任を負う」、同法第185条第1項は「複数人が共同で不法に他人の権利を侵害した場合、連帯して損害賠償責任を負う」と規定しており、同法第195条第3項は「父、母、息子、娘または配偶者関係に基づく他人の身分法益を不法に侵害し、情状が重大である場合、財産上の損害を被っていなくても、被害者は相当する金額の賠償を請求できる」としている。さらに最高裁判所の1966年台上字第2053号の判例には「配偶者の一方の行為に不誠実があり、共同生活における円満・幸福を破壊した場合、婚姻契約の義務に違反したことによって他方の権利を侵害したものと見なされる」とある。

 審理後の裁判所の判断は以下のとおりである。

 本件において、乙の配偶権は甲、乙の婚姻関係に基づき保障を受けるべき権利であり、甲丙間において姦通または相姦の行為があると証明することができなくても、通常の交友関係を超えたさまざまな親密な行為が存在し、甲、乙間の共同生活における円満・幸福を破壊しており、情状が重大である。よって、甲、丙は乙の配偶権を共同で侵害していると判断する。これに基づき甲、丙に対して20万台湾元の精神的損害にかかる賠償金を連帯して乙に支払うよう判決が下された。

 台湾法によれば、配偶者を有する者と性的関係が生じた場合、刑法上の「姦通罪」の処罰を受ける可能性があるが、たとえ性的関係がなくても通常の友人関係を超えた親密な行為があった場合、やはり民事上の賠償責任を負う可能性があるため、注意すべきである。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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