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第182回 台湾法における「契約締結上の過失」


ニュース 法律 作成日:2017年3月27日_記事番号:T00069703

知っておこう台湾法

第182回 台湾法における「契約締結上の過失」

 いわゆる「契約締結上の過失」とは、契約の締結を予定している当事者の一方が自己の故意または過失により契約の不成立または無効をもたらした場合、当該契約が有効に成立することを信じた相手方に対し、このような信頼により相手方に生じた損害を賠償しなければならないことを指す。

 台湾法における契約締結上の過失についての根拠規定は民法第245条第1項であり、その内容は次の通りである。

 「契約が成立していなくても、当事者の一方は、契約の作成または交渉のために次に掲げる行為のいずれかを行った場合、契約の成立を信じた相手方に生じた損害について、賠償責任を負う。

1.相手方が質問をしたときに、契約締結につき重大な関連事項を悪意をもって隠匿した、または不誠実に説明した場合。例えば、甲はビルを建設する予定で乙から土地を購入し、建築士にビルの設計費用を支払ったが、乙が地質の問題により当該土地にビルを建設することはできないという事実を悪意をもって隠匿したため、最終的に契約は成立不能となった

2.自己が知っているまたは保有する相手方の秘密であって、秘密保持されるべきであるという意思表示を相手方が明示している秘密について、故意または重大な過失により漏らした場合。例えば、女性スターである甲は、整形を依頼する予定の医師である乙に対し甲の整形につき漏えいしないよう要求したが、乙は診療所の宣伝を目的に外部に漏らしたため、最終的に甲は乙に整形を依頼できなくなった

3.その他明らかに誠意に反する行為があった場合。例えば、甲は設計士である乙に対し甲の建物の室内設計を依頼し、参考として異なるスタイルの設計図案を提出するよう要求した。乙が数種の設計図案を提供した後、甲は乙に依頼しないと表明したにもかかわらず、最終的に乙の設計図案を使用した」

 契約締結上の過失は実務においてよく起きるが、損害を受けた一方が民法第245条第1項に従い損害賠償を請求することができると認める判決は少ない。その主な原因は、加害者に主観的に悪意または重大な過失があることを証明しようとしても極めて難しいことにある。従って、損失を回収できないというリスクが生じないようにするため、相手方との契約の締結が確実となるまではサービスの先行提供または費用の先行支出は避けるべきであるということに特にご注意いただきたい。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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