ニュース 法律 作成日:2017年9月18日_記事番号:T00072914
知っておこう台湾法柯市長の発言
8月19日に台北市内で行われたユニバーシアード夏季大会の開会式で、蔡英文政権が進める公務員の年金改革に反対する団体のデモ隊が会場を取り囲み、選手の入場を妨害するトラブルがあった。この事態について、柯文哲台北市長は記者会見で、当該団体のことを「王八蛋」(「ばかやろう」のような意味)という言葉を用いて批判した。ある女性が、柯市長のフェイスブックページ上のメッセージで「誰が王八蛋なのか?」と尋ねたのに対し、柯文哲は「あなたと反年金改革団体」と回答した。このフェイスブック上の柯市長の発言が名誉毀損(きそん)に当たるとして、ある市民が台北地方法院検察署に告発した。
刑事責任、公然侮辱罪の成否
このように、不特定多数の者が閲覧可能なSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で他者を侮辱する行為には、刑法第309条第1項の公然侮辱罪が成立し得る。同罪が成立すると、拘留(最長で120日)または300台湾元以下の罰金に処せられる。なお、同罪は刑法第314条により親告罪とされているため、告訴権者(犯罪の被害者等)からの告訴がなければ、起訴されない。
柯市長による「あなたと反年金改革団体(が王八蛋である)」旨の発言については、同罪が成立する可能性がある。しかし、台北地方法院検察署に告発したのは、本件の当事者ではない者であり、現段階で、告訴権者である被害者等は告訴していない。刑事訴訟法第237条第1項により、告訴期間は、告訴権者が犯人を知ったときから6カ月以内とされているため、この告訴期間を過ぎてしまうと不起訴処分となる。
民事責任、「王八蛋」は1万元!?
公然と人を侮辱した場合、上記刑事責任とは別に、民事上の損害賠償責任を負うことになる。昨年話題となった「悪口価格表」(中国語・罵人価目表)には、発言の内容および賠償額がまとめられている。これは、インターネット上でジョークとして出回ったものではあるものの、実際の台湾の裁判例に基づいてまとめられている。
「悪口価格表」によると、「幹(何なの)」は0元、「更年期到了(更年期でしょう)」は2,000元、「王八蛋」は1万元、「白痴(ばか)」は5万5,000元、「神経病(おかしい)」は30万元、「特殊性関係(特殊な関係)」は100万元の損害賠償責任を負うことになる。
もちろん、実際の損害額の算定ではさまざまな事情等が考慮されるため、この悪口を言ったからこの金額といった具合に、単純に決められるものではない。場合によっては、高額な賠償金の支払いを命じられる可能性もあるため、公の場はもちろん、SNS等の不特定多数者が閲覧可能なところでも、不用意な発言をしないよう注意されたい。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
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