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第291回 外国への犯罪人引き渡しについて


ニュース 法律 作成日:2019年7月15日_記事番号:T00084604

知っておこう台湾法

第291回 外国への犯罪人引き渡しについて

 香港で先月9日、中国本土への犯罪人引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対するデモが行われました。今月1日には、暴徒化したデモ隊が立法院を占拠するなど、同改正案を巡り、緊迫した状況が続いています。

 今回は、外国への犯罪人引き渡しについて、台湾にはどのような規定があるのかをご紹介させていただきます。

引き渡し条約と国内法

 台湾政府は現在、▽セントクリストファー・ネビス▽パラオ▽マーシャル諸島▽マラウイ▽グレナダ▽セントビンセント・グレナディーン▽ドミニカ(Commonwealth of Dominica)▽ドミニカ共和国(Dominican Republic)▽エスワティニ▽南アフリカ共和国──と犯罪人の引き渡しに関する条約を締結しています。

 そのため、条約締結国からの犯罪人引き渡し請求については、当該国との間の条約に基づいて手続きが進められます。

 これに対して、犯罪人の引き渡しに関する条約を締結していない国からの引き渡し請求および引き渡し条約に定められていない事項については、台湾国内法である引き渡し法の規定に基づいて処理されます。

自国民不引き渡しが原則

 引き渡し法第2条では、請求国領域内、または請求国および台湾の領域外で罪を犯し、請求国法および台湾法のいずれの規定でも処罰すべき場合には、引き渡しを承認することができるとされています。

 ただし、台湾法の規定において法定される最も重い刑が1年以下の有期懲役である場合はこの限りでないとされています。また、引き渡し法第3条本文では、犯罪行為が軍事、政治、宗教性を有する場合には、引き渡しを拒絶することができるとされています。

 さらに、引き渡し法第4条第1項本文では、引き渡しを請求する犯罪人が台湾籍である場合には、引き渡しを拒絶しなければならないとされています。その他、引き渡し法第5条第1項では、台湾において不起訴とされた場合、既に判決が出ている場合、審理中の場合などには、引き渡しを拒絶しなければならないとされています。

 また、引き渡し後の犯罪人について、引き渡し法第7条第1項本文および第8条本文では、請求国は、台湾政府の同意を得なければ、引き渡した犯罪人を追訴すること、引き渡し請求書に記載した以外の犯罪を処罰すること、引き渡した犯罪人を第三国に引き渡すことが禁止されています。

福田優二弁護士

福田優二弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

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