ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第290回 営業を行う際に留意すべき贈賄の疑い


ニュース 法律 作成日:2019年7月8日_記事番号:T00084479

知っておこう台湾法

第290回 営業を行う際に留意すべき贈賄の疑い

 台湾では、腐敗防止に関しては主に「刑法」と「貪汚治罪条例」(以下、腐敗防止法)により取り締まりが行われており、贈賄の相手が公務員または公共機関の場合にのみ、刑事責任が発生する恐れがあります。贈賄罪の構成要件に該当しないよう、以下の2点に留意する必要があります。

相手が公務員か

 刑法と腐敗防止法上の公務員の地位は一義的ではなく、例えば医師の場合、私立病院の医師は公務員ではないと考えられますが、公立病院の医師は判例で、公務員に該当する、しないのいずれの判断も見られます。公共機関、国営企業で働いている場合は公務員と判断される可能性が高いです。

対価関係の有無

 賄賂は、公務員の職務に関する報酬と定義されています。職務行為の対価として提供された場合に賄賂と判断され、▽謝礼金▽飲食費用▽贈呈品▽お歳暮▽中秋節や端午節の贈答──など名目は問われません。例えば、入札について権限を持つ者に対し、入札手続きでの利益を求める対価に該当する場合には、贈賄罪に問われるリスクがあります。

倫理規定にも留意

 営業活動を行う際には、刑法、腐敗防止法だけではなく、公共機関、国営企業の贈呈などに関する内規にも違反しないよう留意する必要があります。

 例えば、行政院が制定・公布した公務員清廉倫理規定(原文表記「公務員廉政倫理規範」)では、公務員がその職務について利害関係を有する者との間で財物の贈答を収受することを禁止しています。ただし、儀礼・慣習、市場価格が500台湾元(約1,730円)以下のものに該当する場合で、かつそれが偶発的であり特定の権利義務に影響する恐れの無い場合には、贈答の収受が例外的に認められ得るとされています。

 以上のことから、公共機関、国営企業、公立病院対する営業は、慎重に判断する必要があるものと考えます。必要に応じて、適法性について現地の弁護士に調査依頼することをお勧めします。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

鄭惟駿弁護士

鄭惟駿弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

知っておこう台湾法