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【ワイズリサーチ】2013年Q1
台湾機械業界の検討と展望


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2013年8月1日

機械業界 工作機械・産業機械

【ワイズリサーチ】2013年Q1
台湾機械業界の検討と展望

記事番号:T00062459

一、2013年Q1業界概況

 2013年Q1での機械業界の生産額は2,002.84億元に達し、2012年同期比は6.41%減のマイナス成長となった。欧州債務危機により、欧米が経済不振に陥ったうえ、2013年Q1での中国の成長は予想された8.2%には届かず、僅か7.7%に留まった。こうした事実から業界全体の成長が減速し、軟着陸の危機に瀕していることが伺える。2011年後半から、中国及び欧米企業の資本的支出が保守的になったうえ、韓国がEUや米国とFTAを締結したため、去年後半から台湾工作機械メーカーの受注には陰りが見え始めた。欧米と中国市場には未だはっきりとした景気回復の兆しが顕れてはいないが、往々としてQ2での生産額はQ1より増える傾向にあるため、2013年Q2での機械業界の生産額(モジュールを除き)は2012年同期比13.87%減ではあるものの、2,108億元に達すると推計されている。

 中国政府は2013年より積極的に都市化を促進し、6,000億〜6,500億人民元を投入して鉄道を建設、東南アジアなどの市場需要も増加させた。中国の軟着陸、欧米の経済減速、韓国のEU、アメリカとのFTA締結、円安などに影響され、2013年の台湾機械業界の生産額(モジュール含め)は2012年比3.01%減の9,082億元と予測されている。業界別の実況に関して、工作機械の2013年Q1での生産額は、2012年Q4比20.18%減の281億元と推測されている。欧米と中国市場の回復状況が不明瞭のままであり、日本政府も円の切り下げを行っているため、今年、台湾工作機械メーカーは新たな挑戦に直面することになる。IT生産設備業界は、半導体の大手メーカーが資本的支出を上げたため、国内ローカル製造した設備を購買、使用し始めた。フラットパネルディスプレイ業界は、大きいサイズのタッチパネルが好調に発展し、関連設備のニーズが高まり始めた。Q1での生産額は230億元であり、2012年Q4比は8.8%増で、2012年Q1比は32.1%増の成長となった。

 木工機械、プラスチック機械、繊維機械、食品機械、印刷機械、化学機械、包装機械などの産業機械クラスタは、台湾機械業界の中で生産額が最も大きいクラスタである。しかし近年中国の産業機械が急速に発展し、アジアとラテンアメリカなどの国際市場へも進出を果たしていることから、台湾産業機械の輸出が圧迫され、生産額の成長にも影響を及ぼしている。2013年Q1での生産額は昨年同期比20.04%減の352億元と予測されており、2013年における生産額は2012年比4.88%減と推計されている。

 流体機械(ポンプ、コンプレッサ、バルブなど)など他の重要産業では、Q1における生産額は昨年同期比4.87%減の165億元と推定され、また2013年での生産額は3.41%減の710億元と予測されている。Q1と2013年においての伝送と自動化機器の生産額は103億元と456億元と推計され、昨年同期比はそれぞれ16.53%増と11.48%増の成長である。ギア、ベアリングなどの機械伝送部品は年間成長率13.35%減の153億元と予測されている。そして国内の需要が増えたことにより、2013年Q1においでのモジュール産業は昨年同期比5.9%増の108億元となった。



二、2013年Q1の重大事件

1、円安危機対応。工作機械の運営モデルの最善化と、製品とサービス競争力の向上。

説明:
 欧米市場は、かつて日本工作機械は台湾のそれより性能が優れていると考えていたが、近年の経済不振に加え、台湾製品のコストパフォーマンスが日本より良いことに気づき始め、台湾製品を購買するようになった。しかし、円安により日本工作機械が従来よりも15%以上安くなっており、台湾製品との値段差が10%以内になった。そのうえ、韓国がEUとアメリカとFTAを締結し、韓国ウォンも切り下げられたため、台湾業者は逼迫した状態に陥っている。また、中国と欧米の市場回復は不明瞭なままであるため、今年Q1の輸出は昨年同期比21.7%減の7.78億米ドルとなり、4月の受注も輸出もあまり期待できない。よって機器組合は今年の輸出額成長率を昨年同期比5〜8%に満たないだろうという見解を示した。

影響:
 欧州の工作機械業界は、経済障壁の崩壊及び新技術による製造プロセスのクローバル化などで、世界をリードするその指導者的地位は揺るがされることとなった。同時に、アジア業者は市場シェアを拡大するため、激しい低価額競争を始めた。そのため、欧州工作機械メーカーは顧客ロイヤルティーを維持するべく、顧客指向のソリューションを展開している。また、中国の基本賃金が上昇しているため、受託製造業者の生産コストが上がっている。少量多様の生産に対応するため、多くのメーカーがロボットと一般マシンを組み合わせる製造プロセスを計画せざるを得なくなっている。

 これをうけ、工作機械の付加価値を向上し、技術サービスの営業収入を全収入の20%まであげるべく、注文からアフタサービスといったすべての工程を提供するサービスセンターの設置を検討するメーカーも現れた。

 この世界的な景気後退時期において、機械の販売を会社唯一の収入源にしてはならない。ハードウェア製造指向からプログラムサービスとエンジニアリング技術(製品+サービス)に転向するサービス業こそが、台湾工作機械業界の難局を克服する新たなビジネスモデルになる。

2、日本企業「サービスロボット」認証制度を導入し、関連ビジネスチャンスを推進。

説明:
 ライフサポートロボットとは、介護、福祉、家事など実際的な生活(空港、病院、歩道など公共スペース、オフィス、住所など)で、人をサポートするロボットを指す。ロボットは人々と接触する機会が多いため、ロボットユーザーと周辺の人々の安全確保がその課題である。2013年2月27日、サイバーダイン(本社:茨城県つくば市)が開発したロボットスーツHALという着用型ロボットは、国際安全基準(仮)「ISO/DIS13482」の認証を取得した世界初のロボットである。ロボットスーツHALに福祉ロボット認証を付与するに至った理由は主に二つある。一つは、このロボットは既に使用されており、顧客は早期にその安全性を公表したいという意図があったこと。もう一つは、国際安全標準(ISO 13482)における日本の発言権を強化するために、認証実例が必要であったことが挙げられる。

影響:
 高齢化、少子化に伴う労働力不足は、サービスロボットのビジネスチャンスになるが、こうしたロボットは人と近距離での接触があるため、安全性を確保することがキーポイントとなる。サービスロボットを開発するメーカーや関係者は、関連法規や標準を上手く組み合わせなければ、ロボットを効率的に普及することはできない。

 サイバーダインが「ISO/DIS13482」の認証を取得したことは、日本企業がロボット市場に対し興味を持ち、工業用ロボット以外にも、もう一つのロボット領域で商機と主導権を手に入れたいという意図の顕れである。現在、台湾も同様に高齢化の問題に直面しており、医療関係事業も人手不足に陥っている。医療従事者の負担が大きくなっているため、サービスロボットを効率的に推進することができれば、今後その発展は多いに期待できる。

3、アプライドマテリアルズの台南ディスプレイデバイス実験室は、台湾にディスプレイデバイス部品の供給能力があると証明。

説明:
2013年3月22日に、半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽電池製造設備のサプライヤーである世界的有名企業のアプライドマテリアルズのが、南部科学工業パークにある台南ディスプレイデバイス実験室(TDL)の設立を発表した。台南ディスプレイデバイス実験室は反射防止層、透明導電性酸化物(TCO)膜と酸化金属トランジスタアレイなどのディスプレイ技術の開発を加速的に行うことを目的としている。

影響:
 台南でのディスプレイデバイス実験室の設立は、台湾にはディスプレイの技術能力があり、世界のリーダー的企業に期待されている証拠である。アプライドマテリアルズは台湾トップクラスの大学と長期的な提携関係を築いており、ローカル製品の購買比率と製品プロセスのグローバル化を向上させるべく、台湾製品の調達に関する目標も設定している。こうした事実は今後、台湾の部品サプライヤーにとって有効に作用するだろう。

三、展望

1、2013年Q2の展望

 「穏中求進(安定を保ちつつ経済成長を促す)」政策に基づき、鉄道建設に対し6,000〜6,500億人民元を投資している中国政府の行動は、台湾機械業界に影響を与えている。アジアの新興国市場と東南アジア市場のニーズは国家によって違うが、日本円対米ドルの切り下げ率が10%にも達し、日本企業はそうした円安の恩恵に与り、価額競争で優位に立っている。これをうけ日本企業は台湾との取引を減らし、台湾と受注競争さえも始めた。これは Q2における台湾機械業界の新たな課題である。しかし、円安の影響を受け、日本からの部品調達コストも低減し、また台湾元も切り下がった。これらは台湾メーカーにとってビジネス交渉に有利にすすめる要素となる。その他にも季節的な理由から、Q2の生産額はQ1に比べ成長する可能性がある。

 2013年Q1での北米半導体設備のB/B値と日本半導体製造設備のB/B値は、共に1を超えており、半導体設備業界リーダーであるASMLは、2013年Q2での売上予想高もQ1を20%上回り、半導体設備の景気が回復していることを示唆している。また、Q1での日本ディスプレイ設備のB/B値は、1を超えたのが二ヶ月、1未満であったのは一ヶ月であり、Q2では小幅成長と予測されている。2013年Q2でのIT設備へのニーズも増えると予想されている。

 2013年2月5日、広東省は基本賃金を5月1日より引き上げることを宣言した。平均最低賃金は19.1%上がり、19.2%増の1,550人民元(約7,208元)となった。これは、北京、上海、深センよりも高く、中国一位の最低賃金と成長率である。2013年2月6日には、深センが3月1日より基本賃金を6%に引き上げ、1,600人民元とすることを発表した。これら事実は中国の人件費問題を浮き彫りとし、メーカーは積極的にイノベーションや産業構造の改革に着手せざるを得ない状況にきていると言える。中国の工場を自動化した場合、相対費用が安くなることが証明されたため、自動化戦略に乗り出すメーカーの数は今後、加速度的に増加するだろう。

 2013年は、徐々に回復の色あいを見せる景気に伴い、台湾モジュール業界もの景気も回復している。現時点での台湾モジュールの輸出比率は年々上昇傾向にあり、2012年には既に42%に達し、2013年には500億の規模にまで回復すると予想されている。

2、2013年の展望

(1)2012年、中国機械は高付加価値、ハイテク、新興産業、設備製造(フライス加工センター、FMC工作機械、ターニングセンター、CNC研削盤、CNCクランクシャフト加工専用機、CNCクランクシャフトターニング&ブローチング加工専用機、コンピューター制御のインクリメンタルフォーミングマシン、フローフォーミングマシン、CNC大型ホブ盤、CNC大型研削盤など)の産業構成を最適化させた。2012−2013年の中国鉄道発展レポートによると、2013年から2015年にわたり、中国政府は引き続き鉄道に対する投資を増大させる見通しで、その規模は1.8兆人民元に達する。2013年だけでも6,000〜6,500億人民元を鉄道建設に投入するため、台湾機械業界の輸出に対し大いに恩恵をもたらす。

 しかし機械産業は下記に述べる三つの点に留意すべきである。まずは欧米と日本が中国市場において展開する製品とそのマーケティング戦略である。例を挙げれば、「安価なハイエンド機種」や「高価機種のビギナーバージョン」などである。次は、韓国と欧米のFTA締結ショックである。韓国でゼロ関税を享受する欧米機械に対して2%〜5%の輸入税に課した場合、欧米に輸出される台湾製品は2%〜5%の価格引き下げを要求され、工作機械の輸出額が8億米ドル、年間輸出額が40〜50億米ドルに達する台湾機械に対し大きな影響を与える。最後の留意点は、日本円が米ドルに対し10%以上もの円安となった今、従来はコストダウンを図り台湾に委託をしていた日本メーカーが、現在は円安のため、台湾との取引を減らし、台湾メーカーとの間で受注競争さえも展開している点である。これらは今年の台湾機器メーカー直面している課題である。
 

(2)スマートモバイル端末がヒットし続けているため、半導体製造設備市場の投資金額の成長は2012年に比べ小幅になると予想されている。フラットパネルディスプレイに関しては、タッチパネルと4K2Kクオリティーの高解像度製品が、スマートモバイル端末の需要を牽引している。2012年後半は、中小サイズのパネル設備が再び増加したうえ、中国メーカーが大サイズパネルの製造設備に投資を続けている。このことから、2013年にフラットパネルディスプレイの製造設備の成長は小幅に転じると予測される。

(3)世界の景気は依然と不明瞭なままであるが、モジュール業界は高度成長の様態を保っている。今後はモジュールにICTと省エネの概念を導入する予定で、生産額は5%の成長になることが予測されている。

 

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