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第1回 「台湾発注・中国出荷」


ニュース 法律 作成日:2007年6月20日_記事番号:T00001101

産業時事の法律講座

第1回 「台湾発注・中国出荷」

 台湾ビジネスの現場や企業内で、法律が関係した問題に直面することは少なくありません。「産業時事の法律講座」では、日系企業に多くのクライアントを持つ徐宏昇弁護士(徐宏昇弁護士事務所)が、最近のビジネスシーンで注目される法律や役立つ事例について、隔週で詳しくご紹介していきます。

 第1回は、最近日系企業にも増えてきた、「台湾で製品の発注を行い、中国の生産拠点から出荷する」ケースに関係した法律問題です。

 「台湾発注、中国出荷」モデルとは、(1)日本企業・商社のIPO(国際調達事務所)が、台湾のA社に製品を発注(2)A社は同受注に関し、部品を台湾のB、C、D社に発注(3)B、C、D社は発注に従い、中国子会社または中国の取引先企業に再発注(4)A社の中国子会社に部品を納品(5)A社が組み立てなどを行った後、顧客日本企業またはその中国拠点納品──といった取引プロセスのことです。

 このような取引プロセスには、多くの法律的問題を生む余地があります。最も発生しやすい問題は、「A社への納品数・品質に問題がある」というものです。日本企業も台湾企業も協調することは長けていますが、訴訟に発展することも少なくありません。

準拠法が重要

 裁判所が国際貿易上の紛争を処理する際には、まず「どの国の法律に準拠するか」(準拠法)を決定します。日本企業と台湾企業の間では、購買契約の中でこれについて取り決めておくことが一般的ですが、台湾企業と中国企業、または中国企業同士の場合では、取り決めが設けられるとは限りません。しかし、適用される法律が不明である場合、当事者は時間と費用を無駄にせざるを得なくなるため、事前にはっきりと取り決めておくことが重要です。なお、問題が知的財産の侵害に関係している場合は、国によって法規定が異なるため、当事者双方が契約の中で何らかの取り決めを行っていたとしても、そのまま適用できない恐れもあります。

 しかし、適用する法律が決まっていても、問題はまだ解決の途上です。なぜならば、上記「継続性供給契約」の事例で起き得る「数量不足」「納品検査」「瑕疵」「担保」などの各ケースでは、国によって法律に対する見解が大きく異なるためです。特に法制度の発展が遅れている中国は裁判官の育成方式が他国と異なり、最終的に意外な決定を出してくることもしばしばです。

台湾企業通じて解決

 当事者にとって本質的に重要なことは、「法律問題」そのものではなく、実際にどのように問題を解決するかでしょう。

 実際、日本企業が台湾企業を通じて中国製品を調達するのは、中国の文化、言語、考え方、技術レベルなどのさまざまな問題を、台湾企業を通して解決するためでもあります。この考え方に基けば、複雑な法律問題も台湾企業に解決してもらうことも十分な選択肢ではないでしょうか。台湾ではここ20年、国際貿易とハイテク技術が著しく発展しました。これに伴い、台湾の裁判所も、国際貿易上の問題の解決に関して「世界一流の水準」までとはいかないまでも、かなりのレベルに至っています。「台湾発注、大陸出荷」という取引方法は、「貿易問題を台湾で一気に解決」させることもできるのです。

 従って、日本企業が台湾企業から中国製品を購入する際には、貿易に関する法律問題を台湾企業との間で直接処理することを契約書の中で取り決め、自社と中国企業や地方自治体との紛争に発展させないようにすることが必要です。訴訟を台湾と日本のどちらの裁判所で行うかは、ケースバイケースで判断するべきでしょう。
 
徐宏昇
 ’82年台湾大学法学部卒業。ビジネス関連法、特にハイテク産業の法務問題に精通し、多くの日系企業のクライアントを持つ。

徐宏昇弁護士事務所
TEL:02-2393-5620 FAX : 02-2321-3280
MAIL:hubert@hiteklaw.tw

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