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第5回 社員を解雇する際に注意すべき法律問題


ニュース 法律 作成日:2007年8月1日_記事番号:T00001836

産業時事の法律講座

第5回 社員を解雇する際に注意すべき法律問題

 
 台湾ではあらゆる会社員は、「労働基準法」の保護を受けています。労働基準法は労働者を守る法律といってもいいでしょう。
 
 原則として、法律に明文規定が無ければ雇用者は社員を解雇することは出来ません。

 一部の企業は社員との雇用契約の契約の中で、特定の条件の下で社員を解雇できることを規定していますが、これが有効かどうかは、その規定が労働基準法の法規定に沿ったものであるかどうかを判断しなければなりません。社員の自由意志による同意があれば良いというものではありません。

 また、一部の企業は雇用契約の中で、「社員は会社が随時発表する作業規則に従うことに同意する」などの旨を規定していますが、社員が作業規則に違反したことを理由に合法的に社員を解雇できるかどうかは、実際の状況が法の規定に沿っているかどうかによって判断しなければなりません。

 現行の「労働基準法」の規定で、社員解雇によく使用される条文は、「員工不勝任工作(仕事に不適任)」です。これは雇用者が一番初めに思いつく解雇理由でしょう。

 しかし実のところ、社員が仕事に適任でないことを証明するのは相当困難です。日本企業の管理職者が、社員が仕事に適任でないと判断するケースは少なくないと思われますが、台湾政府および裁判所が、当該社員が仕事に適任であるかどうかを判断する際の基準は日本企業のそれよりも低く、また、そのことを理由に社員を解雇する際には、「資遣費(解雇手当)」を支払わなければなりません。

  30日以内の解雇実行が必要

 労働基準法の規定では、以下の状況においては雇用者は直接社員を解雇でき、また解雇手当も支払わなくてもいいとしています。

1)労働契約締結時に虚偽の意思表示を行い、雇用者が誤信から損害を得る恐れのある場合
2)雇用者または同僚に対して暴行または重大な侮辱行為を行った場合
3)労働契約または作業規則に違反し、その程度が重大な場合
4)有期刑以上の刑が確定し、執行猶予もしくは罰金による処罰を受けなかった場合。

 1)~3)の三項の場合においては、雇用者は事実を知った時から30日以内に社員を解雇しなければなりません。もしその期限を過ぎても解雇を行わない場合は、その権利を放棄したものとみなされます。

 1)~4)の状況において社員を解雇した場合、双方の関係はかなり緊張したものとなるでしょう。通常、社員は強く反発します。従って、このような解雇を執行する際には、先に明確な証拠を収集し、弁護士に処理を任せることで、社員にその場で離職同意書にサインをさせ、一気に問題解決を図らなければなりません。もし時間稼ぎや、比較的柔軟な方法で処理してしまうと、さらに難しい問題を生んでしまうでしょう。

 また台湾では、解雇された後に、地方自治体の労工局に対して訴えを起こし、本来は請求できない解雇手当などの利益を得ようとする労働者が少なくありません。しかも、地方自治体の労工局は労働者に加担する場合が多いため、社員の離職を処理する際には十分な理由と証拠を用意し、労工局に対しても強気に正当な主張を行うことが大切です。そうすることによって、政府に解雇の合理性を信じさせ、労工局が「労働検査」などの手段を用いて雇用者に対して不合理な条件を突きつけることを避けることができます。
   
徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所
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