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第8回 表見代理


ニュース 法律 作成日:2007年10月24日_記事番号:T00003317

産業時事の法律講座

第8回 表見代理

 
 民法に規定のある「表見代理」とは、代理権のない者が他者の代理人であるかのように装い、また一方で、代理された「本人」は、そのことに反対しないばかりか、代理人が本人に代わっての事務処理遂行を容認することで、代理権のない者が本人名義で行った法律行為に対して、責任を負わなければならなくなる、というものです。

 ビジネスの現場において、表見代理の状況は非常によく発生します。事後に本人が代理人の代理権を否定することも、またよくあることです。しかし法律の規定によると、本人の行為によって、代理人であると主張している者(表見代理人)が本当に代理権を持っているかのような誤解を他者に対して与えた場合、本人はその表見代理人の行為に対して責任を負わなければなりません。

配偶者が「責任者」となったケースは?

 最高法院(最高裁判所)で最近、次のような判例がありました。

 事実上は一人会社である某株式会社の責任者の配偶者が、新聞・雑誌に工場を売却する旨の広告を掲載しました。買い主が銀行関係者、仲介会社と共に現地を視察した際、接待をしたのは配偶者と総経理でした。契約に判を押したのも代金を受け取ったのも配偶者でした。代金は直接会社の口座に振り込まれました。

 しかし後日、売り主は買い主に工場を引き渡すことを拒否し、配偶者が署名した売買契約の効力について、そうした権利を配偶者に授権していないと主張して否定しました。売り主はさらに、「会社がその主要資産を売却する場合には株主総会の決議を経なければならない」という会社法の規定を引用し、売買契約が無効であることを主張しました。

 この訴訟は最高裁への上訴までもつれましたが、最高裁は「前述の会社法の規定は少数の株主を保護するためのものであるが、売り主の会社は一人会社であること、また三カ月の売却期間内に会社の責任者または株主が売買に対して異議を唱えることはなかった」ことを理由に、売り主は表見代理授権者の責任を負うと判断しました。

 ビジネスにおいて代理権を持たない者に法律行為を行わせ、事後にその効果を否定するというやり方はよく見られるため、こうしたことが少しでも疑われるケースでは、注意深く当たる必要があると言えるでしょう。

 確かに法律には「表見代理」の規定がありますが、この規定は注意深い人のみを保護する規定です。また、各種法律には代理人権限とそれに対する制限が規定されており、これを悪用しようという人物とビジネスを行うということになれば、少し注意を怠っただけでわなにはまり、無効な契約を結ばされ、お金を支払ったのに何も得られないという事態に陥ることもあり得ます。
 
徐宏昇弁護士事務所
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