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作成日:2007年9月26日_記事番号:T00002800
産業時事の法律講座
第8回 台湾独特の賃貸契約
台湾で部屋を借りた経験は、多くの読者の方々が実際にされていると思います。台湾での一般的な部屋の借り方は、大家が「崔媽媽版」賃貸契約を使用し、借家人と共に「民間公証人事務所」で公証を行い、約3カ月分の「押租金(敷金)」を取るというものです。
「崔媽媽版」賃貸契約というのは、「崔媽媽基金会」によって定められた賃貸契約書のことです。この基金会は、台湾が中央集権国家から民主国家へと移り変わり始めあちこちで社会運動が起こっていた1989年に設立され、約20年間の長期に渡って住居に関する問題に取り組んできたため、現在では賃貸に関する法律問題の消費者紛争および調停機構となっています。この基金会が制定した賃貸契約は、最も公平な契約書であるとの評価を受けており、その条文は訴訟において裁判所もその効力を認めるものとなっています。
社会団体の規準に権威
崔媽媽基金会のように、社会団体が社会の信頼を得、かつ事実上政府に代わって部分的ながら公権力を行使するに至るといったことは、台湾では珍しいことではありません。こうしたことは台湾社会の特色といっていいでしょう。
部屋を貸す際に、大家が最も恐れるのは、借家人が家賃を支払わないことと、賃貸契約が満了しても借家人が部屋を明け渡さないことの2点です。「公証法」の規定によると、賃貸契約の中に賃貸期限満了時に部屋を明け渡す旨の規定があり、かつ公証を行っている場合、もし借家人が賃貸契約満了時に部屋を明け渡たすことを拒否した際には、大家は裁判所に部屋を明け渡すよう強制執行を申請することができます。このため、大家の多くは自衛手段の一つとして、借家人が期限満了時に部屋を明け渡さない場合には、裁判所に強制執行を申請することができるとの条項を賃貸契約書の中に設けています。このようなやり方で、いざというときに訴訟を起こす面倒を省くというのは、台湾ではよく見られることです。
また、「押租金」とは、借家人が家賃を滞納する、部屋を壊す、または何らかの事故があった時のための一種の保証金のことです。台湾の民法には、借家人が家賃を滞納していたとしても、滞納額が家賃二カ月分に満たない場合は、大家は賃貸契約を破棄することができないという借家人を守るための規定があります。また、ここにいう「二カ月分以上の家賃」とは、前述の「押租金」から未納額を差し引いた後の「二カ月分」を指しているため、三カ月分の「押租金」をとっている場合、大家は借家人が五カ月間家賃を滞納した場合に、初めて契約を破棄できるということになります。
つまり、大家にとって賃貸初期に受け取る「押租金」は一種の臨時収入であると同時に、借家人が契約違反をした際に、大家の権利行使を阻害する諸刃の剣(delimma)でもあるわけです。
徐宏昇弁護士事務所
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