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第10回 税金滞納と出国制限


ニュース 法律 作成日:2007年11月21日_記事番号:T00003860

産業時事の法律講座

第10回 税金滞納と出国制限

 
 皆さんもご存じのように、台湾では税金を滞納すると、政府から「限制出境」すなわち、「出国制限」を受ける恐れがあります。

 「限制欠税人或欠税営利事業負責人出境実施辧法」の規定によると、個人の税金滞納額が50万台湾元(約171万円)以上になると、税務機関は「入出境及移民署」に「限制出境」の処置をとらせることができます。営利事業の税金滞納額が100万元以上になった場合も同様です。司法院大法官会議は1994年に、この「辧法」の規定は違憲ではないとの解釈を下しています。

 税金を滞納していたとしても、自分では分からないケースは少なくありません。会社経営がうまくいかず畳んだとしても、法律の規定にのっとって解散・清算する手続きをとらなければ、税務機関は終了を知り得ません。その後一定の期間が経過して、税務機関が営業税または所得税が納められていない(税務機関の一方的な認定)ことを発見し、会社の責任者に連絡して説明を求めます。しかし連絡がつかないため、これを税金滞納と認定して「限制出境」を申請し、当人は航空券を購入していても出国できないことを出国審査時に初めて知るのです。

 前述の「辧法」には、「限制出境」を解除する6種類の方法が規定されています。その中で最も簡単なのは、滞納している税金を全額納税することです。しかし、税金を滞納している人は通常、支払いの意思または能力がないため、必然的にその他の方法を考えることになります。その場合、担保金を支払うことや一部を納税し、滞納額を100万元以下にするなどの選択肢があります。

 規定に従って会社を解散・清算する方法もあります。それでもだめな場合は、滞納された税金に対する、政府の徴収する権利がなくなるのを待ってから、解除を申請するしかありません。

 会社が営業を停止して何年も経過してから清算を行うのは相当のリスクがあるため、決して有利な選択ではありません。また滞納した税金が「法定徴収期間」を過ぎるのを待つにしても、長い長い期間を経なければなりません。
  
 「税捐稽徴法」の規定では税金の法定徴収期間は5年となっていますが、これは5年後には「限制出境」が解除されるということではありません。なぜなら同法には、すでに強制執行が開始されたものに対しては、この5年間の期間計算が停止されるという規定があるからです。 

 また、もし行政執行に移されている場合、行政執行署も「限制出境」を請求することができます。

 実務上の観点から見ると、「限制出境」は税務機関が税金を徴収する上での有力な武器です。台湾のような小島に閉じ込められることは、誰にも耐えられません。従って商売をする際には、営業を行っているか、終了しているかにかかわらず、細心の注意を払って規定を遵守することが大切です。一度でも税務機関に税金滞納と認定されてしまえば、それ相応の代価を支払わなければ、貴重な自由を取り返すことはできないのです。


徐宏昇弁護士事務所
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