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第11回 台湾の「通訊監察」


ニュース 法律 作成日:2007年12月5日_記事番号:T00004137

産業時事の法律講座

第11回 台湾の「通訊監察」

 
 一般に「通信監聴」といわれているものは、台湾の法律用語では「通訊監察」といい、「通訊保障及び監察法」の中に規定が設けられています。この法律に規定されている要件を満たせば、検察官または司法警察は裁判所に対して通訊監察を申請することができます。通訊監察の対象は、文字・映像および音などによる通信から、郵便や書簡、言論・談話まで含まれています。

 従って、もし読者の方が、警察署の偵察隊を訪れる機会があり、警察官がイヤホンをしたまま「ほけーっ」としているのを見かけても、音楽を聴いてサボっていると誤解しないでください。たぶんその警察官は監察結果の整理をしているのです。

 昔は多くの事件を解決

 法律の規定では、通訊監察を行ってもよい案件は、最も軽い刑でも3年以上の有期刑に値する犯罪を犯した疑いがある場合か、特定の重大犯罪に限られています。従って、刑事犯罪・条例違反のほとんどで、捜査当局は通訊監察を行う許可を得ることができません。これは、プライバシーを保護するために設けられた規定と言っていいでしょう。しかし、警察の立場から見ると、有効な捜査手段を奪われたことにほかなりません。法律の規定が厳格ではなかった過去の時代、警察は監聴によって多くの一般犯罪を解決してきたのです。

 通訊監察の許可書を発行できる権限を持つのは裁判所(軍事裁判所を含む)ですが、外国勢力による台湾の国家安全を妨げる行為に対しては、「綜理国家情報工作機関首長(国家情報機関の長官)」も監察許可書を発行できると定められています。

 通訊を監察する方法は、もちろん「監聴」だけには限られません。ただし、私人宅に盗聴装置・録画設備やその他の機材を設置することは法律で禁じられていますし、監察を受ける人の通訊を妨げないことも求められています。監察終了時には、監察を受けていた人にその旨を通知しなければならないことも決められています。しかし、通知を行うことが監察の目的を阻害する恐れがある場合は、通知を延期することができます。また、監察によって得られた情報が、捜査中の犯罪と無関係の場合は、それを破棄しなければなりませんし、その内容を知っている人は秘密を保持しなければなりません。これらの規定に違反した場合は民事・刑事責任を負い、被害者は国家賠償を請求することができます。

人権保障では進歩

 台湾の通訊保障監察法は1999年に初めて施行されました。立法当初は反対の声も多かったものの、施行から8年が過ぎ、前世紀のように監聴が乱用される状況はなくなりました。特に、私立の「徴信社」が電話会社の職員を買収して監聴を行わせたり、他人の家に勝手に録音装置を設置するといったような現象は明らかに改善されましたし、警察が何かというと「案外案(別件逮捕)」を行うといったことも少なくなりました。人権の保障という点では、進歩があったと言えるでしょう。


徐宏昇弁護士事務所
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