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第16回 デジタル写真を盗むとどのような罪になるか?


ニュース 法律 作成日:2008年2月20日_記事番号:T00005594

産業時事の法律講座

第16回 デジタル写真を盗むとどのような罪になるか?

 
 ここ数日、台湾で最もホットなニュースは、香港のある芸能人と多くの美人有名人たちとの「濡れ場」写真が何者かによってインターネット上で公開され、鑑賞・ダウンロードをされたというニュースです。この事件によって被害を受けた女性たちは、その多くが同一の芸能プロダクションに在籍していましたが、彼女たちが過去に一生懸命作り上げたイメージはすべて崩れてしまいました。これは工場が火災にあった場合と似ていますが、唯一異なるのは芸能プロダクションは誰からも保険金を受け取ることができないことです。

以前は「窃盗罪」を適用

 事件の状況からみると、今回の事件は、男性芸能人がハードディスクかメモリーに記録していた「濡れ場」写真を他人に違法コピーされ、その写真がネット上に公開されたいうもののようです。

 台湾の法律によると、違法に写真をコピーする行為は、写真作者の著作権侵害、および「無故取得電磁記録(本人の同意を得ずに電磁記録を取得する)罪」に該当する可能性があります。

 著作権法については、今回インターネット上に公開されている写真を見る限り、ただ単に男女の性行為の過程を忠実に記録しているだけなので、最高裁判所の見解によると「創作性」がないと判断され、これらの写真に著作権はないと判断されます。

 「『無故』に他者の『電磁記録』を取得した罪」は2003年の刑法改正の際に改正された条文です。元の規定では「電磁記録」を「動産」として、「窃盗罪」を適用していました。ここでいう「無故」とは、主に「未経他人同意(本人の同意を得ず)」という意味で、犯人は5年以下の有期刑を受けますが、窃盗罪と同程度の刑期となっています。

現在も厳しい処罰は難しい

 しかし「電磁記録」が刑法の保護対象となったのは21世紀以降のことですので、台湾の裁判所の見解は、いまだにかなり保守的なもので、犯人の目的が営利、かつ被害者に重大な経済上の損害を与えていない限り、通常裁判所は有罪判決を行いません。

 他人の電磁記録を取得した後、さらに他人に転送し公開するという行為において、転送を受けた人は理論上「收受贓物罪」を構成しますが、電磁記録が「贓物(不正な方法で得た財産)」に当たるのかどうかについては、今のところは判例がありません。

 他人の「濡れ場」写真をネット上に公開する行為は「妨害秘密」罪を構成する可能性があります。処罰の対象となる行為は、「未経他人同意記録之非公開活動(本人の同意を得ずに非公開の活動を記録すること)」および「他人之秘密」の2種類ですが、前者については、写真が美女の同意の下に撮影されていれば犯罪は成立しませんし、後者については、これらの写真が「秘密」に当たるのかどうかの判断がポイントとなります。したがって、もし裁判所がこれらの写真は単なる「非公開活動」であり、「秘密」ではないと判断すれば、犯罪は成立しません。

泣き寝入りやむなし

 何はともあれ台湾の裁判所では、前述のような罪名の下では、他の犯罪と比べ、重刑を処すことはありません。民事賠償に関しても、これらの写真に写っている男女自身に過失があったかどうかを判断しなければならないという問題があります。したがって、もしこのような事件が台湾で発生したならば、当事者には人生と事業に対する大打撃となりますが、それを甘んじて受け入れるしかないでしょう。


徐宏昇弁護士事務所
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