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第19回 台湾の著作権保護要件の厳格化について


ニュース 法律 作成日:2008年4月9日_記事番号:T00006645

産業時事の法律講座

第19回 台湾の著作権保護要件の厳格化について

 
 さまざまなメディアが発達した現代社会では、「創作」は一つの生活手段になっているといえるでしょう。芸術を志す人が受ける待遇は、過去に持たれていた「貧しい芸術家」といったイメージとはまったく違ったものになってきています。

 各種著作物の利用形態が複雑化してきたことに伴って、近年、著作権に対する意識も高まってきました。台湾の裁判所が著作権の保護に対して行う判断も、以前のように緩いものではなく、厳格になっています。

 著作権法の規定によると、著作者は著作物を「完成」させた後に著作権を取得し、他者がコピーすることを禁止できます。台湾の裁判所の「著作の完成」に対する解釈は、「創作性のある著作の完成」となっています。しかも、相当程度の創作性がなければ、著作物は著作権法の保護を受けることができないのです。創作性が低いと判断された場合は他者が写そうがコピーをしようが、裁判所はそれを侵害行為とは認めてくれません。

 台湾の裁判所が創作性に対して下した最新の判決の中で、注目すべき意見を見てみましょう。

1. 一般に市場に出回っている「カタログ」が、単に商品の展示・説明をするだけのものである場合、裁判所は通常、創作性を認めず、著作権法による保護を受けるべきものと認めない。

2. 商品名・成分・商標などのデータの表示、製品について作成する使用説明書・小冊子などは形式が似ており、内容も一般的であるため、著作権は認められない。

3. 写真が単に実物の状態を忠実に記録しているだけであり、撮影者の創意が表れていない場合は著作権を行使できない。

4. コンピュータープログラムの目的はその実行である。従って、実行ができない、ミスの多いコンピュータープログラムは「未完成」の著作物であり、著作権を行使できないとの判決が出されたことがある。

5. 「公の秩序・善良の風俗」に違反する著作は著作権を主張できない。過去の最高裁判所の判決では、『プレイボーイ』誌のヌード写真のコピーは著作権の侵害を構成しないと判断された。

 著作権の保護は、創作を奨励するだけではなく、公衆が著作物を利用する権利に関しても考慮しなければなりません。著作物に対する保護の程度を調整することによって、両者間の均衡をうまく図っていかなければなりません。

 現在のところ、裁判所が著作権保護に関して行っている保護要件の審査は比較的厳格です。高度な創作性を持つ著作を奨励することで、創作性の低い著作を公共財産とし、公衆が自由に利用できるようにしようという考えがあってのことでしょう。


徐宏昇弁護士事務所
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