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第24回 緩起訴(起訴猶予)


ニュース 法律 作成日:2008年7月2日_記事番号:T00008532

産業時事の法律講座

第24回 緩起訴(起訴猶予)

 
 台湾ではこの数年の「司法改革」で、緩起訴(起訴猶予)が有効な方法の一つとして用いられるようになってきました。緩起訴とは、「それほど重大ではない犯罪について、被告がその犯罪を認め、かつ被害者の同意が得られた場合に、検察官が緩起訴処分を下す。これにより、関係者(被告、被害者、検察官)は裁判所での長い訴訟手続きなしで、被告の処罰方法を決めることができる」というものです。

検察官が処罰を決定

 かつては裁判所も検察官も共に、犯罪を追訴する機関でした。そのため、検察官が提出した証拠が不十分な場合、裁判所が代わって証拠を集め、被告が罪を逃れることがないようにしていました。しかし、司法改革により、検察官は、「挙証責任(立証責任)」を最高裁判所を通じて厳格に求められるようになりました。また裁判所は、検察官の挙証が不十分なら無罪判決を下すという、本来の意味での審判機関となりました。

 この結果、検察官の地位は被告弁護人と同等になってしまいました。一方で新制度は、検察官に対して多くの決定権を与えました。そのうちの一つである「緩起訴」は、検察官が被告に対して直接処罰方法を決定することができる制度です。

被告と被害者の和解が有効

 緩起訴処分を下すことができるのは、一般案件のみで、重罪案件は除外されます。検察官が緩起訴処分とするかどうかを検討する際に最も重要なポイントは、被害者の同意です。もし被告が緩起訴処分を受けたいと考えるのであれば、被害者と和解することが最も有効でしょう。

 検察官は緩起訴処分とすると同時に、被告に対し、次のことを命じることができます。

1)被害者に対する賠償
2)公益団体または国庫に対する支払い
3)コミュニティーでのボランティア活動
4)改善更正

 実際、多くの犯罪のケースでは、上記の処罰が刑罰として用いられています。緩起訴処分では、その処罰の内容は被害者だけではなく、被告の同意も得なければなりません。つまり、被害者と被告の双方が納得する処罰の方法が採用されるのです。

 緩起訴制度が施行されてから、裁判所の取り扱う案件数は確実に減少しました。被害者と被告の双方が裁判所に出向く手間もなくなりました。商業関係の犯罪では、双方の協議の下、緩起訴処分によって解決が図られることが多いようです。

 現行制度では、たとえ検察官の捜査段階で、双方が協議によって合意に至らず、検察官が当該案件を起訴した後も、協議を行う余地は残されています。それは裁判所が、三者(被告、被害者、検察官)の協議の内容によって判決を下すという方法です。こうした判決は通常、三者共に受け入れられるもので、案件が迅速に解決され、刑事処罰を行うという目的も果たすことができます。


徐宏昇弁護士事務所
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