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第27回 「著名商標」を侵害したら解散?


ニュース 法律 作成日:2008年8月13日_記事番号:T00009495

産業時事の法律講座

第27回 「著名商標」を侵害したら解散?

 
 経済部の発表によると、「企業の名称が他者の『著名商標権』を侵害し、裁判所の確定判決が出た後もその名称を変更しない場合、経済部は当該侵害企業の解散を命じることで、著名商標と消費者を保護することができる」とする、「公司法」の改正を提案するようです。

 しかし、この提案の立論はかなり荒削りで、「ひと昔前の政府」の考え方であると言わざるを得ません。

 商標法の規定によると、他者の「著名商標」を企業の名称として使用し、その侵害の程度が「当該著名商標の識別性または信用を損なわせる」と判断された場合、「著名商標」の権利者は裁判所に対し、侵害を排除するためその改名を求めることができます。判決の主文は通常、「被告は著名商標XXを企業名として使用してはならない」、「被告は経済部に対して企業名の変更を申請しなければならない」となる場合がほとんどです。

 被告がその判決に従わない場合、裁判所は罰金を科すことや、会社の責任者を拘留することができます。判決内容が後者(「被告は経済部に対して企業名の変更を申請しなければならない」)に当たる場合、原告は経済部に対し、被告の企業名の変更を申請することができます。しかし判決の中では、被告の会社の名称をどのようなものにするかについては触れられておらず、経済部も被告の新しい会社名を決めることができません。

 つまり、経済部による法改正に対する提案は、この問題を解決しようというものなのです。

社名変更判決=会社の解散?

 しかし、法律には「比例原則」という理論が存在します。これは、「鶏を割くのにわざわざ牛刀を用いる(中国語のことわざ)」、「豚を焼くのに家ごと燃やす(英語のことわざ)」という例で説明されるものです。前述の提案に当てはめると、「裁判所の命令は単に、被告が『特定の企業名』を使用してはならないというものであるのに、経済部は会社の解散という『死刑』によって企業名変更の目的を果たそうとしている」と言え、かなり乱暴なやり方であることが分かります。

清算完了まで社名は存続

 また、たとえ経済部が被告の会社の解散を命じたとしても、本来の目的は達成できません。なぜなら、被告は解散命令を不服として行政裁判所に上告することができ、その判決が確定するまでには通常2~3年かかるからです。被告の会社が上告しなかったとしても、解散命令によってすぐに会社が消滅するわけではなく、「清算」が完了するまでは、あくまでも一つの企業として存在し、その名称も引き続き使用されます。

 経済部の提案は法律上の「比例原則」に反したものであるばかりか、本来の目的も達成されません。経済部はむしろ、被告の企業名を暫定的に取り消すことや、企業名を番号にしてしまうなど、裁判所の確定判決を忠実に執行するために必要な規則をまとめるべきでしょう。

徐宏昇弁護士事務所
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