ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第21回 銀行振り込みに関する法律問題


ニュース 法律 作成日:2008年5月21日_記事番号:T00007566

産業時事の法律講座

第21回 銀行振り込みに関する法律問題

 
 政権交代間際の5月初旬、外交スキャンダルが発覚しました。政府官僚がパプアニューギニアとの国交樹立交渉に関し、密使役を務めたロビイスト(私的な政治活動を行う人物)の言葉を信じ込み、秘密資金の10億台湾元(約34億円)を先払いしてしまったのです。結局、国交が結ばれることはなく、振り込んだ資金も戻ってこなかったため、検察側は容疑者のメモをもとに、政府官僚の事務所や自宅の大規模捜査を行いました。

 ビジネスの場でも類似の事件が発生し、資金が持ち逃げされることは決して珍しいことではありません。メーカーによっては、取引先への支払いのために銀行口座に多額の資金を預けていることがあります。これらの預金を合法的な手段で持ち逃げされないようにするには、あらかじめどのような対策を採っておけば有効なのでしょうか。

 企業の一般的な対策として、「信託口座」を開設し、信用できる人にその管理を任せるという方法があります。また、最もよく行われているのは、信用できる弁護士に口座を開設してもらい、その口座に資金を振り込むとう手法です。契約相手の口座に直接振り込むことはなく、双方と弁護士の契約内容に従って、一定の条件の下で相手方に支払いを行います。

銀行の責任、保障の一つに

 銀行での資金の保管と振り込みには、利息と手数料が発生しますが、これに関しては銀行に預ける側が、利息と手数料についての協定をあらかじめ銀行側と結びます。万が一問題が起こった場合、銀行も責任を逃れられないため、こうした高額のケースでは、銀行の幹部が担当することになるようです。預ける側にとっては、このことも保障の一つになります。

 たとえ、銀行から資金を持ち逃げしようとする者がいた場合でも、合法的な手段であれば、銀行は支払いを拒否できません。しかし、管理上または法律上の理由を用いて、支払い時期を引き延ばすことはできます。つまり、持ち逃げされないよう、少なくとも対応する時間をかせいでもらうことはできるのです。

 マネーローンダリングのケースでは、資金の出所や受益者が分かりにくいため、世界各国・地域で法規制が設けられています。金銭の流れを容易に把握することができる、マネーローンダリングに対する規制が厳しい国家・地域の銀行を選ぶことも考慮すべき選択肢の一つです。

 前述の外交スキャンダルで明らかになった問題がもう一つあります。それは、民主主義体制の台湾において、少数の上層部のみで、このような多額の資金を動かす決定ができたということです。これも多くの企業に共通する問題点の一つでしょう。巨額の取り引きは、綿密な調査と審査を行い、会議の場を経た上で決定していれば、このようなトラブルは発生しなかったはずです。


徐宏昇弁護士事務所
TEL:02-2393-5620 FAX : 02-2321-3280
MAIL:hubert@hiteklaw.tw

産業時事の法律講座