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第17回 工事の遅れによる報酬増額を求める権利


ニュース 法律 作成日:2008年3月12日_記事番号:T00006033

産業時事の法律講座

第17回 工事の遅れによる報酬増額を求める権利

 
 台湾では請負工事、特に政府発注の請負工事が遅れることは当たり前のこととなっています。しかし、工期延長の原因が業主またはその他の業者にある場合でも、影響を受ける業者は苦情を訴えるのが関の山で、賠償を求めることはできないことが多いようです。

最高裁で画期的判決

 最近このようなケースにおいて、業者にとって朗報と言える判決が最高法院(最高裁判所)によって下されました。

 ある工事コンサルティング会社が、2000年8月より基隆市政府発注の高架橋工事で工事監督を行っていました。予定工期は1,080日で、報酬は工事請負価格の2.21%でした。しかし施工開始後、基隆市政府は施工業者に対して工期を782日間延期することを許可しましたが、請負価格は変更されませんでした。コンサルティング会社はこのため、基隆市政府が工事監督報酬を増額しないのは不当だと、裁判所に訴えました。


 工事コンサルティング会社の訴えは、1審と2審では裁判所に退けられました。同工事の総工費は巨額であり、工期が延期されることは初めから予測可能で、報酬には工期が延期された場合の費用も含まれている、というのが判決の理由でした。

 公共機関による請負企業への発注規定などを定めた「機関委託技術服務廠商評選及計費弁法」によると、工事が延期された場合、監督会社は監督費用の増額を請求できるとされています。しかし、この「弁法」は問題の案件には適用されませんでした。納得がいかない工事コンサルティング会社は最高裁に上告し、最高裁は今年1月、以下の理由によって原告の訴えを支持し、2審の高裁に審理やり直しを求める差し戻し判決を下しました。

1. 「機関委託技術服務廠商評選及計費弁法」は「政府採購法(政府調達法)」に基づいて制定されており、基隆市発注の同工事が「政府採購法」に従って発注されている以上、「弁法」も同工事に対して適用される。


2. 契約で定められた工期は1,080日であり、その報酬もまた契約により2.21%とされているが、それは1,080日分の工事監督費用である。それを超えた部分について、工事コンサルティング会社は別途報酬を請求できる。

3. 工期の延長期間は、本来の工期の72%を超えており、割合が高すぎるため、元の契約時に予見可能であったとは言い難い。このため、延期された部分の費用は工事コンサルティング会社が負担すべきではない。

合理的な補償獲得に根拠

 工事コンサルティング会社は改めて高裁での再審に臨むことになりましたが、勝訴できるかはまだ予断を許さない状況です。この裁判は既に2年間もの時間がかかっており、工事コンサルティング会社が受けた損害は、補いようのないものとなっています。

 今回の判決の最大の意義は、今後政府機関と報酬の増額交渉を行う企業にとって、根拠となる判例ができたことで、合理的な補償を得られる可能性に道を付けたことにあると言っていいでしょう。


徐宏昇弁護士事務所
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