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作成日:2007年7月18日_記事番号:T00001589
産業時事の法律講座
第4回 「約談」と「交保」
最近、台湾の司法機関は積極的にインサイダー取引の調査を行っています。事件が起きるたびに、企業の董事長や高級幹部らが法務部調査局や検察、警察に「約談」(任意での事情聴取)され、十数時間にも及ぶ取り調べを受けた後、ある者は「飭回」(釈放)、ある者は「交保」(保釈)され、またある者は「限制住居」(事実上の出境停止)や「聲請覊押」(勾留請求)をされたなどと新聞で報道されます。
権威時代の名残残す刑事訴訟法
台湾の現行刑事訴訟法は、権威主義時代の法律を一部改正しただけのもので、民主主義時代になっても全面的な改正は行われていません。現在の法廷における審理プロセスは民主的、かつ透明感があるものとなったことは事実ですが、一部に過去の制度のなごりを残しています。最大の特徴は検察官の権限が強いことで、権威主義時代は「拘提」(出頭要求)、「交保」、「限制住居」、「覊押」(拘留)および「搜索」を判断●命令することができました。現在はこのうちの「覊押」と「搜索」の権限は、裁判所の帰属に改められています。
「約談」は法律上は「傳喚」といいます。法律の規定によると「傳喚」とは、検察官が捜査に必要と判断した場合、関係者を警察署や調査局または検察署などに呼び出し取り調べを行うことです。もし当事者が呼び出しに従わない場合は、検察官は「拘提」を行い、当事者を強制的に指定した場所に連行し、取り調べを行うことができます。
一度「約談」を行った当時者を再度確実に出頭させるために、検察官は当事者に保証金を提供することを要求できます。いわゆる「交保金」(保釈金)です。当事者が「傳喚」されても出頭しない場合、保証金は没収されます。
また、検察官は当事者を拘束する権利は持ちませんが、「限制住居」を行うことはできます。これは通常、「禁止出國」という手段が用いられます。
当事者の立場から見れば、「傳喚(約談)」、「拘提」、「交保」、「限制住居」、さらには「覊押」に至るまで、すべて人身の自由を制限する措置ですが、刑事犯罪の証拠を確保することが目的です。現在の制度下では、最も重い「覊押」する権利は裁判所にありますが、検察官はその他の方法を選択して利用することができます。
強い検察望む声も
検察官が保釈や出国禁止の判断を行えることは、日本の方々にとっては違和感があるかもしれません(日本の場合、保釈の判断は裁判所)。台湾の場合、まだ民主的な先進国の刑事訴訟法とは距離がありますが、「犯罪の捜査は強い権限を持った検察でなければできない」という考えが市民の間に根強いことも事実です。
徐宏昇弁護士
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