ニュース 法律 作成日:2023年9月13日_記事番号:T00111094
産業時事の法律講座台湾の吉諾科技の董事長と総経理を兼任していた林錫宏氏は2013年、同社のサプライヤーである中国の浙江鑽宝と合弁でセーシェル法人、賽席爾鑽宝公司を設立しましたが、同年4月に不正が発覚し、離職しました。
林氏は、吉諾科技と同じ製品を中国で生産するため、吉諾科技に当時在籍していた同僚3人から同社が生産する製品の▽材料費分析表、▽原価分析表、▽原価見積表、▽実際原価に関する資料──を取得し、浙江鑽宝に提供しました。
これに対して吉諾科技は、これらの資料は同社の子会社である深圳吉諾電子のものだと主張し、親会社のGenesis Technology USA, Inc.と共に林氏を新北地方検察署に提訴しました。
検察官による起訴を受理した新北地方法院(地方裁判所)は17年8月、被告4人の背任罪の成立を認め、6月ないし5月の懲役とするが、罰金刑で代替できるとの判決を下しました。
検察はこれを不服として控訴しました。
再審で実刑が確定
智慧財産法院(知財裁判所)は19年7月、背任罪ではなく、「外国や中国大陸地区で使用することを意図し、許諾を経ずに営業秘密を漏えいした罪」により、被告らに1年6月ないし1年10月の懲役判決を下しました。
被告らは上訴し、最高法院(最高裁判所)は20年8月、原判決を破棄しました。
再審の結果、智慧財産法院は21年7月、原判決の内容を維持する判決を下しました。しかし、林氏以外の被告はすでに会社側と和解が成立していたため、15~20万台湾元(約70~90万円)を国庫に寄付する条件で、執行猶予となりました。
林氏が上訴すると最高法院は22年7月、これを棄却しました。林氏は再審と刑の執行停止も求めましたが、これも棄却されました。さらに抗告したものの、23年6月に棄却され、林氏の実刑が確定しました。
最高法院の認定は以下のとおりです。
1. 吉諾科技は米国のGenesis Technologyが台湾に設立した子会社であり、深圳吉諾電子は吉諾科技が投資して立ち上げた子会社である。故に深圳吉諾電子が所有する営業秘密は吉諾科技の営業秘密でもあり、同社は本件において告訴する権利を有する。
2. 林氏は賽席爾鑽宝で役職に就いていないものの、その他の被告は営業秘密を含む全ての電子メールのCCに林氏を加えていた。これは本件について林氏が共犯であることを証明している。
徐宏昇弁護士
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