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第577回 製品の「原産地」認定


ニュース 法律 作成日:2025年7月7日_記事番号:T00122699

知っておこう台湾法

第577回 製品の「原産地」認定

 「原産地」とは貨物の出所である国または地域を指し、原産地は、製品の表示の問題に関係しており、さらには関税の税率などに影響を及ぼす可能性があります。

 しかしながら、現代のサプライチェーンにおいては、一つの工業製品には往々にして複数の国の原料や部品が含まれており、また、国を跨いで加工や組立が行われていることから、当該製品の原産地を判断するのは得てして簡単なことではありません。

■原産地の認定基準

 台湾では、「輸入貨物原産地認定標準(以下『本標準』といいます)」第3条で、原産地の認定基準は(1)一般貨物の原産地認定、(2)後発開発途上国の貨物の原産地認定、(3)台湾と貿易協定、合意を結んでいる国または地域の貨物の原産地認定の三つに分けられる、とされています。実務上、ほとんどの輸入貨物は第1類に該当します。

 第1類の輸入貨物の原産地をどのように認定するかについて、本標準第5条では次の二つの基本原則を定めています。

一、当該貨物が単一の国または地域で「完全生産」されたものである場合、その場所が原産地となる。例えば、南アフリカで採掘されたダイヤモンドについては、当該ダイヤモンドの原産地は南アフリカとなり、青森で収穫されたリンゴについては、当該リンゴの原産地は日本となります。

二、貨物の加工、製造または原材料が二つまたは二つ以上の国または地域にかかわる場合は、当該貨物に「実質的変更」をもたらした国または地域を当該貨物の原産地とする。

■「実質的変更」とは

 「実質的変更」が何を意味するかについては、本標準第7条第1項に「原材料から加工または製造して生じた貨物について、その該当する税関輸入税則コードの最初の6桁の数字が、原材料のものと異なっているとき」または「貨物の加工または製造によって前号の税則コードの変更が生じてはいないが、重要な製造工程が完了しているか、または付加価値率が百分の三十五を超えているとき」の二つのケースのいずれかを指す、とあります。

 例えば、その中央演算処理装置(CPU)が韓国から、マザーボードが中国大陸から、メモリが米国から供給され、組立および加工地が日本である一台のノートパソコンは、部品やモジュールが複数の国から供給されてはいるものの、最終的な、要となる実質的加工や組立が日本で行われ、当該製品をばらばらの部品から、機能を完備した販売可能な最終商品へと変えているため、上記の定めにより、当該ノートパソコンの原産地は日本ということになります。

 台湾の消費者にとっては、日本のブランドの同じ製品であっても、「日本製」と「ベトナム製」では、その印象および価値が明らかに異なります。従って、台湾法における原産地に関する規定を十分に理解していれば、日系企業による、「日本製」を訴求力とした台湾での広告および販売に資することが可能です。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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