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第23回 授権資本額の範囲内での減資および増資について


ニュース 法律 作成日:2013年6月10日_記事番号:T00044114

知っておこう台湾法

第23回 授権資本額の範囲内での減資および増資について

 最高裁判所が2013年5月1日に下した13年度台上字第808号民事判決によれば、会社の減資、増資が会社定款の授権資本額の変更に関わる場合には株主会の特別決議を行わなければならないが、授権資本額の範囲内の減資、増資である場合には株主会の普通決議を行えばよいことになった。

 本件の紛争の概要は以下の通りである。

 甲、乙、丙、丁、戊はいずれもA株式会社の株主であり、甲はA社の株式の41%を保有し、乙、丙、丁、戊はA社の株式を合計で59%保有している。10年、A社の経営状況の悪化などを受けて財務構造を調整するため、乙、丙、丁、戊は株主会においてA社の資本金を1億7,990万台湾元減資してから7,990万元増資することを決議した。甲は提訴の上、「減資、増資はいずれもA社に対し重大な影響を与える決定であり、株主会の特別決議(すなわち、発行済み株式総数の3分の2を代表する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数が同意する決議)を行わなければならない。乙、丙、丁、戊の持ち分はわずか59%であり、甲は株主会に出席していないため、議決手続きは違法であり、今回の決議は成立しない」と主張した。

授権資本か払込資本かで判断

 最高裁判所は審理の上、以下の通り判断した。

 会社法は株式会社について授権資本制を採用しており、同法第156条第2項の規定に基づき、定款に記載されている株式総数は分割発行することができる。従って、株式会社の資本は「授権資本」と「払込資本」に分けることができ、もし定款に記載されている授権資本を変更する場合には株主会の特別決議をもって定款を変更する必要があるが、払込資本のみを変更する場合には定款変更の必要はないため、普通決議(すなわち、発行済み株式総数の過半数を代表する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数が同意する決議)を行えばよい。本件において、A社の授権資本は3億元、払込資本は1億8,000万元であり、乙、丙、丁、戊は株主会において、「まず1億7,990万元を減資してから7,990万元を増資した後、払込資本額を8,000万元に変更する」という決議を行っており、これは授権資本額の範囲内であり、普通決議を行えばよいため、甲の敗訴という判決を下す。

 会社の資本額の変更が、授権資本の変更であるか払込資本の変更であるかによって議決に関する規定が異なる点に特に注意する必要がある。 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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