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第22回 競業避止条項について


ニュース 法律 作成日:2013年5月27日_記事番号:T00043856

知っておこう台湾法

第22回 競業避止条項について

  台湾高等裁判所台南支所は2013年4月9日に12年度上易字第280号判決を下し、雇用主と被用者間で、被用者が離職後一定期間において同一または類似の業務に従事してはならないことを約定できるが、この種の競業避止条項については、制限の範囲が明確でなければならず、その内容が合理的で必要性を有しなければならないほか、さらにこの制限により被用者に生じる損害に合理的な補塡(ほてん)がなされて初めて、当該競業避止条項は有効であると指摘した。

本件の概要は次の通りである。

 甲と乙は11年6月、甲を雇用主、乙を被用者として労働契約を締結した。当該契約の中において「乙は離職後1年間、A県およびB県で『自然、物理、化学、生物』などの教授行為に従事し、または自己(もしくは他者)の名義で学習塾を開設してはならない。違反した場合、乙は50万台湾元を甲に賠償しなければならない」と約定されていた。しかし乙は離職後すぐに別の学習塾で教師を務めたため、甲は乙に対して競業条項に違反しており違約金を支払わなければならないと主張した。

憲法違反を主張

 これに対し乙は、「この競業条項は乙の労働権を著しく侵害しており、台湾の憲法に違反しているため無効とすべきである。また乙は甲の教材を使用も盗作もしておらず、甲の学生を引き抜いているわけでもないため、甲に損害を与えていない」と抗弁した。

裁判所は審理後、次のように判断した。

 被用者が離職後一定期間において同一または類似の業務に従事してはならないことを雇用主、被用者が事前に協議の上約定することは、この競業避止の約定期間・内容が合理的である場合は、憲法における労働権の保障に反していない。

 しかし、この種の競業避止条項については、制限の範囲が明確でなければならず、その内容が合理的で必要性を有しなければならないほか、この制限により被用者に生じる損害について合理的な補塡がなされてはじめて、競業避止の約定は有効であると考えられる。

補塡措置なしが鍵に

 本件において、乙は甲の学習塾で教師を務めており、甲の資源を利用して学生を流出させる可能性があったため、適度な競業避止を設定する必要があった。また競業避止の区域はA県およびB県のみに限られており、甲は全面的には乙の労働権を制限・剝奪していないため、競業禁止の内容は合理的である。

 しかし、甲は、離職後1年間A県およびB県で類似の業務に従事してはならないと乙に要求する以上、少なくとも、競業避止により乙に生じる損害を補塡しなければならないが、本件の競業避止条項にはいかなる補塡の措置もないため、当該条項は効力を生じず、甲の敗訴と判決した。

 実務上、台湾裁判所は被用者保護の立場を採ることがよくあるので、本判決は雇用者が労働契約を締結する際の参考となる。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

 

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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