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第83回 台湾は「貸主天国」!?日本の借地借家法と台湾法の相違点


ニュース 法律 作成日:2015年1月26日_記事番号:T00055117

知っておこう台湾法

第83回 台湾は「貸主天国」!?日本の借地借家法と台湾法の相違点

 台湾に進出した日系企業の多くは、次のような状況に出くわしたことがあると思います。

 台湾で店舗またはオフィスを借り、2、3年経営に尽力し、やっと採算が取れるようになってきたものの、賃貸借契約期間が満了する際、大家が賃料の大幅な引き上げを要求し、条件をのまなければ契約を更新しようとしないため、日系企業の多くが、顧客の流出や、移転にかかる時間、内装費などを考慮して、泣く泣く賃料の値上げを受け入ざるを得ないことがあります。

優れた日本の借地借家法

 前述のような、大家が賃貸借期間満了の際に、突然賃料を大幅に引き上げるという状況は、日本ではあまり生じません。その主な理由は、賃借人に対する日本法の保護が台湾法よりはるかに優れているからです。日本の借地借家法第26条第1項は、「建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年から6カ月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものと見なす。ただし、その期間は定めがないものとする」と定め、同法第28条は、「建物の賃貸人による第26条第1項の通知または建物の賃貸借の解約の申し入れは、建物の賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況および建物の現況ならびに建物の賃貸人が建物の明け渡しの条件として、または建物の明け渡しと引き換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申し出をした場合におけるその申し出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」と定めています。

 つまり、日本法では、大家が賃貸借期間満了の際に、更新を望まない場合、少なくとも6カ月前までに前もって借家人に通知しなければならないだけでなく、正当な事由もなければなりません。いわゆる「正当な事由」について、実務上の典型的な事例には、「貸主が賃貸から10数年後転勤から戻って自分のアパートに暮らしたい」「建物が老朽化しているため、引き続き賃貸すれば危険」などが含まれます。家賃の値上げについて、基本的には「正当な事由」には該当しないため、借家人が同意しなければ、大家が賃貸借期間の満了後に賃料を大幅に引き上げることは極めて困難であると言えます。反対に、台湾法では、日本の借地借家法第26、28条に類似する規定がないため、賃貸借期間の満了後、大家は自由に賃料を引き上げることができることから、台湾は「貸主天国」であると言え、日本は「借主天国」であると言えます。

日台の意識相違に注意

 近年円安により、台湾の法人、富裕層の間で、日本で不動産を購入し、賃貸することが流行していますが、台湾人には前述の日本の借地借家法のような法意識がないため、建物を賃貸した後、賃料の引き上げが困難であることに気付くことになります。反対に、日本人が台湾で建物を借りるとき、大家による賃料引き上げの行為について往々にしてなすすべがありません。

 実は、「借主天国」の日本であるか「貸主天国」の台湾であるかにかかわらず、事前に日本法、台湾法に精通している法律の専門家に相談すれば、契約条項を設定するなどの方式により、適法かつ十分に自己の権利を保証することができますので、日本で大家になることを希望する台湾人(台湾企業)、または台湾で借家人になることを希望する日本人(日本企業)は、参考にして下さい。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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