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第81回 労働者の有給休暇が 未消化となった場合の雇用主の義務


ニュース 法律 作成日:2015年1月12日_記事番号:T00054810

知っておこう台湾法

第81回 労働者の有給休暇が 未消化となった場合の雇用主の義務

 台湾士林地方裁判所は、2014年12月1日、2014年度労訴字第28号民事判決により、年度終了時、労働者の有給休暇が未消化となり、それが雇用主の責に帰すべき原因による場合には、雇用主は未消化日数分の賃金を支給しなければならず、労働者個人の原因によって自分で未消化にした場合には、雇用主は未消化日数分の賃金を支給しなくてもよい旨判示した。

本件の概要:

 Aは01年から営業主管としてB社に勤務し、1カ月当たりの給与は13万台湾元近くであった。13年12月、Bはまず会社の欠損や操業短縮を理由として、労働基準法(以下「労基法」という)第11条第2号(すなわち、雇用主において欠損があるまたは操業短縮を行う場合)に基づきAとの労働契約を解除した一方、14年3月、BはさらにAにセクシャルハラスメント行為があったことを理由として、労基法第12条第1項第4号(すなわち、労働者が労働契約または就業規則に違反し、その情状が重大な場合)に基づき、Aとの労働契約を解除するとともに、解雇手当の支払いを拒否した。そこでAはBを被告として、解雇手当と有給休暇未消化分の賃金計約106万元の給付を求めた。

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 裁判所は審理の結果、A勝訴の判決を下した。その主な理由は次の通りである。

1.労基法第11条は、雇用主が一方的な意思表示によって、将来に向かって労働契約の効力を失わせるものであり、形成権の一種である。13年度、Bには確かに欠損、操業短縮の状況があったため、Bがまず労基法第11条第2号を理由としてAとの労働契約を解除したことで、解除の効力はすでに生じており、後からさらに労基法第12条第1項第4号の事由により契約を解除することはできない。

 また、労基法第17条により、雇用主は第11条に基づき労働契約を解除する場合、解雇手当を支給しなければならないため、Aが解雇手当の支払いをBに請求することには理由がある。

2.労基法第38条には、「同一の雇用主または事業者組織における勤続年数が一定の期間に達した労働者に対し、以下の規定に基づき、毎年有給休暇を与えなければならない。1.勤続年数が1年以上3年未満の場合は7日とする。2.勤続年数が3年以上5年未満の場合は10日とする。3.勤続年数が5年以上10年未満の場合は14日とする。4.勤続年数が10年以上の場合、1年につき1日を加算し、総日数は30日までとする」と規定されている。

 また、行政院労工委員会台労働二字第21827号書簡の解釈によれば、年度終了時、労働者の有給休暇が未消化となり、それが雇用主の責に帰すべき原因による場合には、雇用主は未消化日数分の賃金を支給しなければならず、労働者個人の原因によって自分で未消化にした場合には、雇用主は未消化日数分の賃金を支給しなくてもよい。

3.本件では、Bが欠損および操業短縮を理由としてAとの労働契約を解除しており、Bに帰すべき原因によってAの有給休暇が未消化となったのであるから、Bは未消化日数分の賃金をAに支給しなければならない。

本件では、Bがまず労基法第12条によりAを解雇することができていれば、Bは解雇手当を給付する必要はなく、未消化日数分の賃金をAに給付する必要もなかった。従って、日本企業が労使紛争に遭遇した場合には、まず労働法に精通した法律の専門家に相談するのが適切である。 *本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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