ニュース 法律 作成日:2014年12月1日_記事番号:T00054118
知っておこう台湾法検索連動型広告とは、ある会社が検索エンジン運営会社からキーワードを購入し、ユーザーが当該キーワードを検索したときに、ユーザーの検索結果ページに、スポンサーサイトとして、当該会社のウェブサイトへのリンク、当該会社の広告のタイトル、説明文等を表示する広告方法である。
検索連動型広告自体は広告としては問題がないものであると解されているが、時折このキーワードに他人の商号、商品名、商標が使用される例がある。このようなキーワードバイによる広告が、他人の商号、商品名、商標にただ乗りする行為であるとして、違法になるのではないかが問題になった事件がある。
同業他社をキーワードに
本件の概要は以下の通りである。
実店舗とインターネットショップの双方で量販店を経営するY社は、2010年11月に検索エンジン運営会社A社から、大手量販店X社が商標権を有する著名商標「家◯◯」を検索キーワードとして購入・登録した。その結果、ユーザーが「家◯◯」をA社の検索エンジンで検索すると、検索結果ページにスポンサーサイトとして「ネット量販店家◯◯毎日安い」という広告のタイトルやY社のウェブサイトへのリンクが掲載されるようになった。X社はこの種の検索連動型広告は、X社の量販店を検索した潜在的な顧客を、同業他社であるY社のウェブサイトに誘導し、X社の顧客を不当に奪うものであるとして、公平交易委員会(公平会、公正取引員会に相当)に通告するとともに、A社に対しても通知を行った。
A社は11年1月4日にX社からの通知を受けた後、自主規制のガイドラインに基づいて、同月6日に当該広告を取り下げたが、Y社は同年2月1日に再び同じキーワードをA社に登録し、検索結果ページには従前と同じ内容の広告が掲載された。
公平会はこれについて調査を行い、11年8月25日の公処處字第100154号処分により、Y社の行為は公正取引法24条の取引秩序に影響するに足りる著しく公正さを欠く行為に該当するとして、差止命令が出され、Y社には50万台湾元の過料の支払いが命じられた。
Y社は当該処分に対し、不服申し立て(訴願)をしたが、行政院は公平会の処分を維持する旨の決定を下した(12年1月5日の院台訴字第1010120518号決定)。
Y社はさらに、(1)検索結果ページにスポンサーサイトとして「広告」という文字を明記しているため、一般消費者に混同を引き起こさないこと、(2)そもそもX社はインターネットショップを有しておらず、また、たとえユーザーが「家◯◯」というキーワードを用いて検索したとしても、必ずしもX社との取引のためではないので、同業他社の潜在的な顧客を不当に奪うといった不正競争行為が認定されるためには、検索連動型広告を行うだけでは足りないこと等を理由として、処分の取消訴訟を提起した。
違反か否か、個別に判断
12年8月16日の台北高等行政裁判所101年度訴字第376号判決は、公平会の見解を援用し、以下の理由により、Y社の行為は公正取引法24条に違反するということができると判断して、Y社の請求を棄却した。
(1)キーワードバイの対象である「家◯◯」は、流通・サービス業界の著名商標である。
(2)Y社とX社はともに量販店を経営しているので、競業関係に当たる。
(3)「家◯◯」というキーワードの使用は、Y社自身やY社の提供する商品やサービスとは何らの関係もない。
(4)X社はインターネットショップを有していないが、自社のウェブサイトを有している。
(5)該当広告のタイトル「ネット量販店家◯◯毎日安い」という内容から、一般消費者にX社のインターネット量販店のウェブサイトへのリンクと思わせる恐れがあり、X社の潜在的な顧客をY社ウェブサイトに誘引し、そのサイト内容の閲覧やY社との取引機会を増やすことによって、X社の著名商標が有する信用の背後にある経済成果にかかる努力に対して損害を与えるばかりか、他の同業者にも商業競争倫理を順守する意欲を減退させ、市場全体の公正な競争秩序に対して悪影響を与える。
キーワードバイによる検索連動型広告を行うこと自体が直ちに禁止されるとまでは言えないが、その態様次第では、公正取引法24条の一般条項に違反するかといったことを個別具体的に検討する必要があると考えられる。
コラム執筆者
黒田法律事務所 尾上由紀弁護士
早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。
黒田法律事務所・黒田特許事務所
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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尾上由紀弁護士
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