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第89回 親子会社の代表者が他社の取締役、監査役に同時当選可能か


ニュース 法律 作成日:2015年3月23日_記事番号:T00056005

知っておこう台湾法

第89回 親子会社の代表者が他社の取締役、監査役に同時当選可能か

 最高裁判所は2015年1月8日、15年度台上字第35号において、法人株主の代表者とその法人が100%出資している法人株主の代表者が取締役、監査役に同時当選するケースは、会社法第27条第2項によってやはり制限されるべきであると指摘した。

 本件紛争の概要は次の通りである。

 A社、B社はいずれもC社の法人株主であり、また、B社はA社の完全子会社である。C社は13年、株主総会を開催し、取締役、監査役を改選した。選挙の結果、A社の代表者である甲がC社の取締役に当選し、B社の代表者である乙がC社の監査役に当選した。

 同選挙で落選した別の株主である丙は、A社、B社が二つの独立した会社であるとはいえ、B社はA社の完全子会社であることから、甲乙がそれぞれC社の取締役、監査役に当選したことは、C社の取締役、監査役のいずれをもA社が任命派遣したも同然であり、実質的には会社法第27条第2項の法人の複数代表者は取締役、監査役に同時当選することができないとの制限規定に違反していると考えた。(会社法第27条第2項:「政府または法人が株主となっている場合であっても、その代表者が取締役または監査役に当選することはできる。代表者が複数いるときは、それぞれが当選することはできても、取締役と監査役に同時に当選したり就任したりすることはできない」)そこで、丙は、甲乙の当選は無効であると主張するとともに、C社と甲乙との間に委任関係が存在していないことの確認を求める訴訟を提起した。

同一法人の複数代表者の当選と判断

 一審裁判所は丙の勝訴を判決したが、二審では、会社法第27条第2項の制限に当選の取締役、監査役がそれぞれ親会社、子会社から出るケースは含まれないと判断し、丙の敗訴を判決した。三審の最高裁判所は、また原判決を覆し、法人株主の代表者とその法人が100%出資している法人株主の代表者が取締役、監査役に同時当選したケースにつき、その二つの法人が形式的には独立して存在しているとはいえ、後者が前者によって完全にコントロールされており、その代表者は実質的には出資する法人が任命派遣した者であることから、その二つの法人株主の代表者が取締役、監査役に同時当選した場合は、同一の法人の複数代表者が同時当選したケース同然であり、会社法第27条第2項の違反を構成していると判断した。

 もっとも、最高裁判所は、本件における甲乙の当選がいずれも無効であると判断したわけではなく、証券取引法の規定を類推適用し、乙の監査役当選のみを無効とすべきであると判断している。

 最高裁判所の判決は各クラスの裁判所に対し強い拘束力を有するため、違法となることのないよう、外国企業はこの最高裁判所の最新の見解に留意しておくべきである。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。 

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。 
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蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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