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第98回 営業秘密法違反に関する刑事事件


ニュース 法律 作成日:2015年6月1日_記事番号:T00057267

知っておこう台湾法

第98回 営業秘密法違反に関する刑事事件

 営業秘密法は2013年1月に改正され、刑事罰の厳罰化が図られている。

1.第13条の1によれば、台湾内において窃取、横領、無断複製などの不正な方法により営業秘密を侵害した者は、5年以下の有期懲役に処され、かつ100万台湾元以上1,000万元以下の罰金を併科され得る。なお、犯罪行為者の得た利益が罰金の最高額である1,000万元を超える場合、得た利益の金額を考慮の上、当該利益の3倍を上限として、併科する罰金は増額することができる。

2.第13条の2によれば、台湾外で営業秘密を使用することを企ててその営業秘密を侵害する、いわゆる「国際的商業スパイ行為」を行った場合、より重い処罰がなされる。法定刑は1年以上10年以下の有期懲役であり、300万元以上5,000万元以下の罰金が併科され得る。なお、犯罪行為者の得た利益が罰金の最高額を超える場合、得た利益の金額を考慮の上、当該利益の2~10倍を上限として、併科する罰金は増額することができる。

3.第13条の4によれば、法人の代表者、法人または自然人の代理人、被雇用者またはその他の従業員が、業務の執行により、第13条の1、第13条の2の犯罪行為をなした場合、その行為者が処罰される他、行為者が処罰された場合には当該法人または自然人に対しても同条の罰金が科される。ただし、法人の代表者または自然人が犯罪の発生を防ぐために尽力した場合はこの限りではないとされている。

中国への漏えい事件で起訴例

 改正後の営業秘密法が適用された事例として、13年12月、台湾の大手電子機器会社A社を舞台とした機密漏えい事件がある。この事件では、A社の高級幹部2名が新会社を設立し、新会社を通じてA社の業務上の機密を中国に漏えいし、約3,300万元のリベートを受け取ったとして、営業秘密法違反で起訴された。なお、この事件の判決はまだ出されていない。

 また、15年4月、台湾の大手電子機器会社B社の管理職2名が、中国のライバル企業に転職するために、B社内の機密文書を電子メールでライバル企業に漏えいしたとして、営業秘密法違反で起訴された。なお、この事件の判決もまだ出されていない。

営業秘密法に注意を

 上記のように、台湾では営業秘密の流出に対する対策が強化されており、営業秘密法違反について、刑事事件とされるケースが少なくないことに留意する必要がある。

コラム執筆者
黒田法律事務所 尾上由紀弁護士

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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尾上由紀弁護士

尾上由紀弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

早稲田大学法学部卒業。 2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

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