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第102回 会社と従業員の法的関係


ニュース 法律 作成日:2015年6月29日_記事番号:T00057790

知っておこう台湾法

第102回 会社と従業員の法的関係

 台湾において従業員を雇用する際、「支配人」という役職名で契約する場合でも、委任ではなく雇用と判断され、労働基準法が適用されるケースがある。

 このように、会社と従業員との法的関係が雇用であるか委任であるかについては、争いとなることがあるが、この点に関して判断した裁判例として、台湾新竹地方裁判所の2013年1月3日2012年度労訴字第79号の判決がある。

 上記裁判例では、被告が正当な理由なく原告を解雇したとして、労働基準法の規定に基づき、原告が被告に対し60万台湾元の解雇手当などを請求したが、被告は「原告の職務名は一般的な委任契約においてよく使用されている『支配人』であり、被告との関係は『雇用関係』ではなく『委任関係』であるため、労働基準法は適用されない」と反論して、解雇手当の支給を拒んだ。

職務名では判断されない

 これに対し、裁判所は以下の通り判示した。

 従業員と会社との法的関係における雇用と委任の区別において、労務提供者の職務名、職務内容、報酬の多寡などのみを判断基準とすべきではない。

 雇用契約では、従業員は、職務上および組織上雇用主に従属し、雇用主の指示に対して強い服従義務を有する。これに対し、委任契約は委任事務の完了を目的としており、また、委任契約では一定の事務の処理が委任され、委任者の授権の範囲内で、受任者は自らの裁量により一定の事務の処理方法を決定することができる。

 本件において、原告の職務名は、一般的な委任契約においてよく使用されている「支配人」であるが、実際には原告は職務上、被告に対し強い服従義務を有し、かつ被告は原告を雇用するに際に、会社法における支配人選任の手続きを経ていないため、原告は会社法における委任された支配人でもない。従って、原告と被告の関係は雇用関係であり、労働基準法が適用されなければならない。

 会社と従業員との関係が委任か雇用かで、労働基準法の適用の要否の結論が異なるため、この点については、慎重に取り扱う必要がある。

コラム執筆者
黒田法律事務所 尾上由紀弁護士

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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尾上由紀弁護士

尾上由紀弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

早稲田大学法学部卒業。 2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

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