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第105回 エクスローサービスの台湾法規範について


ニュース 法律 作成日:2015年7月20日_記事番号:T00058197

知っておこう台湾法

第105回 エクスローサービスの台湾法規範について

 「エスクローサービス」とは主に、取引当事者双方以外の第三者が取引の当事者を代理して提供するインターネット上での代金の受取・支払代行サービスをいいます。

間に立って取引の安全性を保証

 例えば、甲はインターネット上で乙に商品を売るに当たり、先に商品を発送すると代金を受け取れない可能性があることに不安を感じ、一方、乙は先に代金を支払うと商品を受け取れない可能性があることに不安を覚えます。このとき、甲、乙は、「エスクローサービス」を通じて、まず乙がエスクローサービスを提供する丙に対し代金を送金し、丙は甲に出荷するよう通知し、乙は商品を受け取ってから甲への支払を丙に通知することにより、甲乙双方の取引の安全性を保証することができます。実務において、米国の「PayPal」、中国の「アリペイ」はいずれも世界的に有名なエスクローサービス業者です。

 台湾法において、エスクローサービスを規範化するものについて、2つに分類することができます。

1)業者が代金の受取・支払代行サービスを提供し、その保管している受取・支払を代行する金員の残高総額が10億台湾元を超える場合、当該業者は「電子支払機関管理条例」(以下「本条例」といいます)の定める「電子支払機関」に該当し、本条例および本条例の各種子法(例えば、「電子支払機関ユーザ身分確認メカニズムおよび取引限度額管理規則」、「電子支払機関内部規制および監査制度実施規則」、「電子支払機関業務管理規則」等)の規制を受けなければなりません。主な規制には以下が含まれます。

 金額チャージ、口座間の資金移動を取り扱う電子支払機関についてはその払込資本金の最低額を5億元とするが、支払・受取代行業務しか取り扱わない場合、払込資本金の最低額は1億元とする。(本条例第7条)電子支払機関がユーザー1人当たりから受け取る台湾元および外貨のチャージ金額は、その残額が合計で5万台湾元を超えてはならない。(本条例第15条)

2)また、事業者が支払・受取代行業務しか取り扱わず、かつ支払・受取を代行する金員の残高総額が10億元を超えない場合、「電子支払機関」に該当しないと解されます。この場合、当該事業者は主として「エスクローサービス約款に記載すべき事項および記載してはならない事項(中国語『第三方支付服務定型化契約應記載及不得記載事項』)」の規制を受けます。

同法規の主な内容には以下が含まれます。

 エスクローサービスを提供する業者は、顧客との契約またはウエブサイトのユーザ規約の中に、企業の事業者情報、エスクローサービスの内容および料金、為替レートの計算、消費者が支払う金員についての保障、消費者の身分認証等の事項について記載しなければならず、「エスクローサービス業者は一方的に契約内容を変更できる」、「消費者は契約のチェック期間を放棄する」、「エスクローサービス業者は契約を任意に終了または解除できる」等の事項を記載してはなりません。

 インターネット上の取り引きが次第に主要な取引形態になるにつれ、台湾でエスクローサービスを取り扱う外国業者もますます増えています。エスクローサービスにかかわる法規は多くかつ複雑なので、業者の方におかれましては、関連事業を展開する前に必ずエスクローサービスに精通した法律の専門家にご相談されることをおすすめします。 

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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