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第107回  労働基準法の解雇事由「就業規則に違反しその情状が重大な場合」


ニュース 法律 作成日:2015年8月3日_記事番号:T00058464

知っておこう台湾法

第107回  労働基準法の解雇事由「就業規則に違反しその情状が重大な場合」

 最高裁判所は、今年(2015年)7月1日に作成した15年台上字第1227号判決において、労働者が就業規則に違反する具体的な事実として、雇用主の内部秩序・規律の維持に大きな影響を及ぼし、雇用主およびその従事する事業に対して相当なリスクをもたらすのに十分なレベルであり、客観的に見て、雇用主が解雇以外の懲罰手段を講じることを期待するのが難しい場合、労働基準法に定める「就業規則に違反し、その情状が重大である場合」の解雇要件に該当すると指摘した。

就業規則違反で従業員を解雇

 本件の概要は次の通りである。

 甲は、06年に乙社に入社し、倉庫管理者として、倉庫の管理、商品の出し入れ、包装スタッフの管理などの業務を担当していた。09年、乙社は、甲が▽出退勤時刻を順守しない▽勤務時間中に乱酔する▽無断で持ち場を離れる▽虚偽の請求書を作成して包装スタッフの賃金を水増しして受領する──など就業規則に違反し、その情状が重大であるなどの状況があると判断したため、甲を解雇した。甲は乙の解雇行為が違法であるとし、訴訟を提起して甲、乙の間に雇用関係が存在することの確認と、乙に対し違法解雇後の未払い賃金を支払うよう請求した。

 第一審の裁判所の判決では甲が敗訴したが、第二審の裁判所では甲の就業規則の違反について、その情状は重大ではないと判断されたため、一審を覆して甲の勝訴判決としたが、第三審の最高裁判所では再度第二審の見解を破棄し、次のように指摘した。

「労使の信頼関係に重大な影響」

一.労働基準法の第12条の第1項の第4号では、労働者が就業規則に違反し、その情状が重大な場合、雇用主は予告なしで契約を解除することができると定められている。「その情状が重大である場合」の要件に合致するかどうかの判断は、▽労働者の規則違反行為の状態▽初回または数回目か▽規則違反が故意または過失によるものか▽雇用主およびその従事する事業に対してもたらすリスクまたは損失▽商業上の競争力▽内部の秩序・規律の維持▽労使間の関係の緊密性▽労働者が職務に就いてからの期間の長さ──などを考慮して、懲戒解雇のレベルに達するか否かを判断しなければならない。

二.労働者が就業規則に違反した具体的な事実が、雇用主の内部秩序・規律の維持に大きな影響を及ぼし、雇用主およびその従事する事業に対して相当なリスクをもたらすのに十分なレベルであり、客観的に見て、雇用主が解雇以外の懲罰手段を講じることを期待するのが難しい場合、上記の「その情状が重大である場合」の要件に合致しないとは判断し難い。

三.本件において甲は乙社に雇用されている間、虚偽の請求書を作成し、包装スタッフの賃金、食事代計2万台湾元余りを水増しして受領したため、刑事裁判所により懲役4月に処されることが確定した(罰金で代替可能)。甲が2カ月という短い期間に、包装スタッフの賃金を25回、包装スタッフの食事代を21回水増しして受領したことは、既に労使間の信頼関係に対して重大な影響を及ぼしており、「その情状が重大である場合」のレベルに達していないとは言い難い。

 本件の最高裁判所の判決は、「就業規則に違反し、その情状が重大である場合」について、分かりやすい解釈を示している。本件からは、従業員が短期間に就業規則に複数回違反し、かつ犯罪に関わる場合、「その情状が重大である場合」に該当する可能性が高いことが分かり、会社の経営陣の参考に値する。 

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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