ニュース 法律 作成日:2015年7月27日_記事番号:T00058329
知っておこう台湾法2015年6月9日、台北高等行政法院は、労働基準法第12条第1項第4号は「労働者が労働契約または就業規則に違反し、その情状が重大な場合、雇用主は予告せずに契約を解除することができる」と規定し、また、同条第2項は「雇用主が前項の規定に基づき契約を解除する場合、その事由を知った日から30日以内に行わなければならない」と規定しているが、当該期限を徒過(とか)した場合、労働基準法第12条第1項第4号に基づく労働契約の解除の効力は生じないと判示した(15年度労上易字第23号判決)。
本件の概要は以下の通りである。控訴人甲は77年5月18日から被控訴人乙に雇用されていた。甲は08年3月20日にいったん定年退職したが、翌日に乙と有期雇用契約を締結し、甲は再び乙に雇用されていた。
乙は13年9月30日、甲が労働契約および就業規則などに違反したとして甲を解雇した。
甲は乙による解雇行為は違法であるとして、労働基準法第14条第1項第6号の「雇用主が労働契約または労働者関係法令に違反し、労働者の権益を損なう恐れがある場合、労働者は予告せずに契約を解除することができる」という規定に基づき、乙との労働契約を解除し、かつ同法第16条および労働者退職金条例第12条第1項の規定に基づき、乙に対し、予告期間中の賃金、解雇手当などを支給するよう請求した。
30日を過ぎたら解雇無効
台北高等行政法院は審理の上、以下の通り判断した。
乙は、甲に労働基準法第12条第1項第4号の事由があるとして、甲との労働契約を解除したが、乙が当該契約を解除した際、労働基準法第12条第2項に規定される30日の期限を徒過していたため、労働基準法第12条第1項第4号に基づく適法な解除の効力は生じない。
次に、乙が労働基準法第14条第1項第6号における「労働契約または労働者関係法令に違反し、労働者の権益を損なう恐れがある場合」に該当することを理由とする、甲の解雇手当の請求については、乙が提供した勤務報告によれば、乙は13年4月または5月に甲が就業規則に違反したことを知ったにもかかわらず、同年9月に甲を解雇したと判断できるため、労働基準法第12条第1項第4号における30日の期限を超えていることから、甲の請求は認められる。
これに対し、甲の予告期間中の賃金の請求に関しては、本件の労働契約は、予告解雇を定めた労働基準法第11条または13条ただし書きの規定に基づき解除されたわけではなく、予告なしの解雇を定めた同法第14条第1項第6号に基づき解除されたため、甲のこの部分の請求については理由がなく、これを棄却する。
労働者を予告なく解雇できる法律上の事由がある場合でも、当該事由を知った日から30日以内という法的期限内に解雇しない場合には、無効な解雇と判断される恐れがあるため、解雇の期限には特に注意すべきである。
コラム執筆者
黒田法律事務所 尾上由紀弁護士
早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。
黒田法律事務所・黒田特許事務所
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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