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第127回 労働基準法の改正、使用者による労働者の職務調整が一層困難に


ニュース 法律 作成日:2015年12月28日_記事番号:T00061188

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第127回 労働基準法の改正、使用者による労働者の職務調整が一層困難に

 立法院は今年(2015年)11月27日、労働基準法の改正案(以下「新法」という)を第三読会にて可決させた。新法により、次の数点に関する重大な改正が行われた。

一.使用者が労働者の職務を調整する場合に順守しなければならない原則

 新法に基づき、使用者が労働者の職務調整を行う場合、労働契約の約定に違反してはならず、また、次の5つの原則に合致しなければならない。1)職務調整が企業の経営のため必須であり、かつ不当な動機や目的があってはならないこと。2)労働者の賃金およびその他の労働条件につき、不利な変更を行わないこと。3)調整後の職務が労働者の身体能力および技術で担当可能なものであること。4)調整する勤務地が非常に遠い場合、使用者は必要な協力をしなければならないこと。5)労働者およびその家族の生活利益を考慮しなければならないこと。

二.少年工および青少年労働者に関する新規定

 新法では、少年工(15歲以上16歲未満の労働者)および16歲以上18歲未満の労働者は危険な業務または有害な業務に従事してはならないこと、また、18歲未満の者が雇用されて労働する場合、使用者はその法定代理人の同意書を取得しなければならないことが規定された。

三.競業避止条項の適法要件の明文化

 使用者と労働者との間での競業避止条項の適法性について、現時点では労働部が公布した「労使双方が離職後における競業避止条項を締結する際の参考原則」により規範化されているが、同原則は行政規則レベルのものであるにすぎず、訴訟事件においては裁判官の判断を拘束することはできない。今回の新法は、競業避止の適法性の要件を法律レベルにまで引き上げたものであり、将来は裁判官も拘束を受けなければならない。

 新法に基づき、使用者と労働者との間での競業避止条項は、次の要件を同時に具備してはじめて適法となる。1)使用者は保護を受けるべき正当な営業利益がなければならないこと(例えば、使用者は「営業秘密法」の規定に該当する営業秘密を保有していなければならないことなど)。2)労働者の職務が使用者の営業秘密への接触またはその使用が可能であること。3)競業避止の対象となる期間、エリア、業務範囲および就職先が合理的なものでなければならないこと。4)労働者が競業行為に従事しないことにより被った損失につき、使用者は補償を与えなければならないこと。

 現在、新法の実施日はまだ決定されていないが、一般的な予想では16年に実施される可能性がある。また、新法の内容につき、将来、労働部が施行細則など執行上の詳細な規定も公布する可能性があり、特に注意するに値する。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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