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第131回 雇用主に「非自発的離職証明書」の発行義務はあるのか


ニュース 法律 作成日:2016年1月25日_記事番号:T00061667

知っておこう台湾法

第131回 雇用主に「非自発的離職証明書」の発行義務はあるのか

 台北地方裁判所は2015年11月30日付15年労訴字第229号判決において、雇用主が労働者を解雇するに当たり、当該労働者が就業保険法第25条の「非自発的離職(自己都合以外の離職)」に該当することにより、非自発的離職証明書の発行を雇用主に要求することができると指摘している。

 本件の概要は次の通りである。

 甲は14年8月、乙社に入社し、教育・研修などの業務を担当していた。その後、乙社は財務・経営に困難が発生したため、15年5月に甲を解雇した。乙社がいつまでたっても賃金、解雇手当などの金銭を甲に支払わなかったため、甲は乙社を被告として提訴し、甲の賃金、解雇手当、乙社のために立て替えた費用など計6万5,000台湾元の金銭の支払いを請求するとともに、非自発的離職証明書の発行を乙に求めた。

 裁判所は審理後、甲全面勝訴の判決を下した。その主な理由は次の通りである。

一.乙社による甲の賃金、解雇手当などの支払い遅延の事実はすでに証明されている。

二.就業保険法第11条第3項には「本法にいう非自発的離職とは、被保険者(労働者を指す)が保険加入組織(会社を指す)の工場閉鎖、工場移転、営業停止、解散、破産宣告により離職すること、または労働基準法第11条、第13条ただし書き、第14条および第20条に規定される各号のいずれかの事由により離職することを指す」と規定されており、同法第25条第3項前段には「第一項の離職証明文書とは、保険加入組織(会社を指す)または直轄市、県(市)の主管機関が発行する証明を指す」と規定されている。

三.本件において、乙社は経営・財務上、困難が発生したことにより甲を解雇したため、甲の離職は労働基準法第11条の非自発的離職に該当する。従って、甲は就業保険法第25条に基づき非自発的離職証明書の発行を乙社に求める権利を有する。

解雇を選択、台湾独特の傾向

 労働者について言えば、非自発的離職証明書を取得する場合の実益は、当該労働者が当該証明書をもって労働者保険局に対し失業給付を申請できることである。反対に、自発的離職の場合は失業給付を申請することができない。従って、弊所の経験によると、労働者が自発的退職または会社による解雇を選択することができる場合、ほとんどの労働者は後者を選択し、非自発的離職証明書の発行を会社に求める。これは台湾実務上の特別な状況であり、貴社が参考するに値する。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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