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第212回 株式会社の株式譲渡制限契約の有効性について


ニュース 法律 作成日:2017年11月20日_記事番号:T00074046

知っておこう台湾法

第212回 株式会社の株式譲渡制限契約の有効性について

 台湾で株式会社を設立する際、会社の閉鎖性を確保するため、共同出資する株主と「その他の株主の同意を得た場合を除き、株式を第三者に譲渡してはならない」と約定した場合、効力を持つだろうか。

 台湾の会社法第163条の第1項の「会社株式の譲渡について、定款で禁止または制限をしてはならない」という規定は、株式会社の株式譲渡の自由原則を示すものだ。そのため、過去には最高裁判所において「『株式は会社の同僚に譲渡することしかできない』という約定は、第三者を拘束する効力を持たない」と判断された判例がある。

 また、高等裁判所において「増資による新株発行契約および合弁契約における『当事者は、その他の全当事者の同意を得た場合を除き、株式を第三者に譲渡してはならない』という約定(以下「当該約定」という)は有効である。会社法上、上記の『株式譲渡の自由原則』は会社に対する規範であり、株主に対する規範ではないことから、株主が相互間で定めた約定は依然として有効である」と判断された前例がある。

無効判断の地裁も

 ところが、地方裁判所には異なる意見もある。桃園地方裁判所において「会社は過去に被告に財務諸表を提出したことがなかったため、被告は会社の損益を知るすべがなく、またその他の株主に対し買い付けの意思があるかを手を尽くして尋ねたが、結果が得られなかった。そこで裁判所は、株主契約における当該約定は無効であると判断した」という事例がある。このような状況でもなお株式を譲渡できないとなると、被告による投資資本の回収を妨げてしまう可能性がある。裁判所が当該約定は無効であると判断したことには、こうした背景が関係している可能性がある。

 もっとも、2015年9月4日から、投資者の必要性に基づき、高閉鎖性の株式会社を設立することを目的として、台湾において「閉鎖性株式会社」を設立できるようになり、株式の譲渡制限を定款に明記できるようになった。

鄭惟駿弁護士

鄭惟駿弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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