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第215回 手荷物に関する免責事項は有効か


ニュース 法律 作成日:2017年12月11日_記事番号:T00074430

知っておこう台湾法

第215回 手荷物に関する免責事項は有効か

 日台間の移動で航空機を利用した際に手荷物が損傷を受けた場合、航空会社に賠償を求めることはできるのだろうか。

 国際航空運送協会が制定した「手荷物免責条項」では、「運送業者は条件付きで私の手荷物を運送しており、当該手荷物は既に損傷を受けている、または関税規則により託送に適していない荷物であると見なされている。私はここに、既に存在する損害または託送に適していない性質に完全に起因する損害について、運送業者の責任を免除する」と規定されている。すなわち、乗客の預けた壊れやすい物品が損傷を受けた場合、航空会社はこれに基づいて免責を主張できるのだ。

 しかし、台湾の消費者保護法第10条の1には「本段落に規定される事業者による消費者または第三者に対する損害賠償責任について、事前に制限または免除を約定してはならない」と規定されており、航空会社の責任免除について、事前に約定した上記の条項と本条は矛盾しているようである。

 桃園地方裁判所2006年度簡上字第23号民事判決では、当該「手荷物免責条項」には消費者保護法第10条の1の禁止規定に勝る効力がないと判断された。

免責条項署名で過失問われる

 もっとも、上記の事件において、航空会社は最終的に賠償する必要がなかった。その理由は、同事件の乗客は、壊れやすい物品を預けた際、発泡スチロールまたは紙くず等を入れる等の防護措置を全く講じておらず、また当該乗客も「手荷物免責条項」に自ら署名し、当該条項の内容を理解していたため、乗客は「(乗客にも)過失があった」との責任を負わなければならなかったことにある。

 裁判所は民法第217条第1項の「損害が発生または拡大した場合において、被害者にも過失があったときは、裁判所は賠償金額を減額し、または免除することができる」に基づき、航空会社の責任は免除でき、賠償する必要はないと判断した。

 以上から、よく飛行機に乗る方は、少なくとも自身の手荷物について衝撃への防護措置を十分に講じ、手荷物が損傷を受けた時に損害賠償請求ができない事態にならないようにご注意いただきたい。

鄭惟駿弁護士

鄭惟駿弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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