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第90回 郭台銘氏、親民党支持で「戦後」に布石


ニュース 政治 作成日:2019年12月16日_記事番号:T00087437

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第90回 郭台銘氏、親民党支持で「戦後」に布石

 総統選挙の勝敗の帰趨(きすう)が既に明白になった中、人々の関心は立法委員選挙の動向や、選挙後の政局に移っているようだ。

 立法委員選では、一度は第三勢力として結集し総統選への挑戦を目指した郭台銘(テリー・ゴウ)鴻海精密工業前董事長と、柯文哲台北市長との協力関係が微妙になっている。郭氏は9月に無所属での総統選立候補を断念した後、国民党離党を表明し、柯氏が立ち上げた台湾民衆党の立法委員選で共闘すべく、同党の比例名簿3位に側近の高虹安氏を送り込んだ。

 しかし11月、郭氏は泛藍(汎国民党陣営)の第二野党、親民党と急接近する。宋楚瑜同党主席はメディアのインタビューで2024年総統選では郭氏を推すことを示唆し、郭氏は「見識の高さや大局観、世界観が他者とは異なる。台湾はまさにこういう人物が必要だ」と宋氏を絶賛した。共に外省人で統一派の2人は会談を重ね、中華民国支持、経済発展の追求、両岸(中台)の平和的関係重視で一致した。

/date/2019/12/16/20column1_2.jpg郭台銘氏。その目は既に24年総統選に向けられている(中央社)

 親民党は19日、郭氏の広報担当を務めてきた腹心の劉宥彤氏(4位)と蔡沁瑜氏(9位)を含めた、郭氏色が濃厚な比例代表候補者名簿を発表。郭氏が柯氏から親民党に協力の重心を移すのではないかとの観測が強まった中、郭氏は先週10日、親民党支持の立場をフェイスブック(FB)で明確にした。

24年出馬表明の背景

 郭氏は支持層の大半が「知識藍」「経済藍」と呼ばれるインテリ層、経済重視の泛藍で、彼らにとっては思想的に近い親民党の方が投票しやすい。親民党の比例票が議席獲得に必要な5%を超えれば、郭氏は総統選で公認を得られるメリットがあり、親民党にとってはポスト宋楚瑜時代に党勢拡大を期待できる。

 一方、柯氏の民衆党にとって、郭氏支持者の票が親民党に流れることは痛手だ。柯氏は先週、24年総統選への出馬を初めて示唆した。政界の常識ではいかにも早過ぎるこの意思表示には、自身の支持者に今後も支持継続を求める意図があったとみられる。第三勢力は二大政党に挟まれて泡沫(ほうまつ)化しやすい上、22年に台北市長を退任して行政リソースを失った後は、民衆党の議席数のみが政治力のよりどころとなるだけに必死さがにじむ。

/date/2019/12/16/20column2_2.jpg立法委員選の民衆党候補を応援する柯文哲氏。民進党が過半数を割り込む場合、キャスチングボートを握る役割を期している(15日=中央社)

 台湾民意基金会が先月下旬に行った政党支持率調査によると、▽民進党、33%▽国民党、23.9%▽民衆党、10.4%▽時代力量、8.7%▽親民党、2.8%──で、民衆党は2桁台の支持で親民党を大幅にリードしていたが、郭氏が親民党重視を明確にしたことで数字への影響が注目される。

 なお、郭氏と柯氏は関係が決裂したわけではない。14日、郭氏は民衆党の薄緑のジャケットを着込み、久々に柯氏と共に選挙区の民衆党候補らの応援活動を行った。それでも別々のオープンカーに乗り込むなど、両者の会話は少なかったようだ。

今後のチャンスは十分

 郭氏は国民党の総統選予備選に敗れた後、第三勢力として柯氏との連合を模索したものの、立場はあくまでも泛藍であり、第三勢力は本来の姿ではなかったということだ。

 そして国民党は総統選の敗北がほぼ確実な上、立法委員選も比例上位に親中国共産党の人物を掲載したことで支持の下落が伝えられている。いずれも惨敗の結果となれば、呉敦義主席の責任が問われる可能性は極めて高く、同党は新たな体制の下で再出発となる。一方、人材不足は依然課題で、24年総統選向けて現時点では勝利を期待できる人物が見当たらないため、同党から郭氏に改めて接近を図る可能性は排除できない。郭氏が今、親民党を足掛かりに泛藍統一候補を目指すことを計算していても全く不思議はない。

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