本日より、日系企業の経営陣の方々にお気に入りのお店をご紹介いただく「味と心の贅沢 総経理のちょっといい店」の連載をスタートします(隔週掲載予定)。第1回目は、弊社ワイズコンサルティングの総経理である吉本康志が、台北市建国北路の寿司店「高玉(こうぎょく)」をご紹介します。
寿司店という看板を一切出していない高玉に、吉本は1カ月に3~4回足を運ぶ。カウンターを切り盛りする店長の天本昇吾氏の、寿司職人としての才能に魅せられている。
ネタの新鮮さ、素材の良さ、高級さを売り物にする寿司店は実は数多い。高玉にとって、寿司ネタ、飯(シャリ)、わさび、しょうゆまで最高のものを使うのは当たり前で、その上で、寿司の魅力を最大限に引き出そうという天本店長の創意工夫がお客に驚きと幸福感をもたらしている。
この日、最初に食べたのはヤリイカ。包丁で細かい切れ目を入れ、さっと熱湯をかけた後、氷水で冷やすと表面が突起のように盛り上がる「松笠造り」となり目を楽しませてくれる。
これに、細かくすりつぶしたフランス産の岩塩と細かくしたゆずの皮を振り掛けて、しょうゆをかけずにそのままいただく。口の中にさわやかなゆずの香りが広がり、岩塩とあいまってイカの味が大きく膨らみを増す。「絶品だ」と吉本。
続いて来たのがタイの昆布締め。利尻産の昆布で締め、1日寝かせたタイは上品な風味が素晴らしい。マグロの赤身は、背中ではなく脂の乗った腹身を使い、口の中でネタとシャリを一体化させるべく、丁寧に切り込みを入れる。コハダもゆずの皮をまぶすことで味を引き締め、ネタのうまみをより引き出している。暑い今の季節は、かんきつ類でさっぱり感を出すことが多い。「一品一品に愛情が込められている」と吉本はこの日も満足げだ。
吉本は網走市出身。カニをはじめ新鮮な海鮮を食べて育ってきたが、「高玉は、素材の良さだけで勝負する北海道の寿司屋とは比較にならない」と語る。
高玉の本店は福岡市にあり、台北店で使うネタは8割近くが九州近海で捕れる魚だ。月、水、金の週3回、朝8時に福岡の市場を出た魚は昼過ぎに桃園国際空港に到着するため、ネタの鮮度は日本と全く変わらない。李登輝元総統や陳水扁前総統をはじめ、台湾政財界の要人も高玉の寿司に舌鼓を打ってきた。
「型にとらわれず、面白いものを」
貫禄十分の天本店長は、何とまだ25歳だが、15歳のときから高玉本店で修行を積んできた。台湾に来たのは2年前だ。3日と空けずに店に足を運ぶ常連客を飽きさせないよう、「型にとらわれず、面白い料理を生み出すことを常に考えています」と語る。新しい料理のヒントが頭に浮かんだら直ちにメモ。好みやどういう評価を受けたかなど、お客の情報を書き留めるのも日課だ。最高の素材を最高に引き立てる技術は、こうした姿勢から生まれている。
ランチは800元から、夜はコース料理(2,500元、3,000元、3,500元)とおまかせ(3,500元)がある。コースは7~9品、おまかせはお造り6種、料理1~2品と寿司8~10貫からなる。月、水、金と週末は常連客でほぼ満席になるため、早めの予約が必要だ。
(なお、天本氏は現在、民生店に移って腕を振るっている)
取材/ワイズコンサルティング・七沢愛果
「高玉」
伊通街店
住所:台北市中山区建国北路1段92巷8号1楼
電話番号:02-2515-3369
営業時間:昼11時30分~2時 夜5時30分~10時
民生店
住所:台北市民生東路三段8号B1(新光民生大楼地下)
電話番号:02-2503-2215
営業時間:昼11時30分~2時 夜5時30分~10時