今回は日本料理「神田橋」をご紹介します。案内役は富士国際電子の野田直人董事長です。
野田董事長
表の引き戸をがらりと開けると、哀愁漂う演歌が耳に入ってきた。テーブル席、カウンター席に、座敷の個室が3室あり、入り口には日本の新聞や漫画などが置かれている。どこか、日本のうどん屋にも似た懐かしい店構えだ。夜8時。仕事を終えた野田さんがやって来た。
ホウレンソウの白和え、筑前煮、ぶり大根──。お品書きにはおふくろの味が並ぶ。掘りごたつ式の足を下ろせる畳の席に座り、まずはビールで乾杯。
野田さんは神田橋が開店した3年前から常連として通っている。理由は「安くてうまいから」。同僚や知人らと連れ立って来ることが多いという。
注文する料理は「だいたいワンパターン」で、定番は鳥立田揚(鳥の空揚げ、120台湾元=約410円)だ。からりと揚がった衣にレモンを絞って口に運ぶと、ジューシーな鶏肉のうま味が広がった。野田さんは自らキッチンで作ることもあるほど、空揚げは好きな料理だ。このほか、ホウレンソウの白和え(100元)、モツ煮込み(120元)、西京焼き(180元)、ぶり大根(180元)を注文した。
モツ煮込みは大根、ニンジン、ゴボウなどの根菜とモツの上に色鮮やかなネギを盛っていて、ほのかに湯気が立ち上る。ほくほくの根菜と歯ごたえのあるモツにみそベースのだしがしっかりしみ込んでいる。ぶり大根は厚めに切った大根にしょうゆやぶりのだしが煮含まれている。ぶりの身もたっぷり詰まっていて、食べ応えのある一品だ。
店主の進藤一峰さんは、「安心して食べられる食材」を追求している。魚は台湾産が中心で、天然ものにこだわる。今の季節は脂の乗ったさんま(日本産)の握りも味わえる。日本では高級魚とされるくえの空揚げもおすすめだ。「冬には鍋にしてもおいしいですよ」と野田さん。
周りの席には、会社帰りのサラリーマンが目立った。日系企業が多い松江路や南京東路から近いため、夜は来店客の7割が日本人ビジネスマンという。野田さんも神田橋に来ると、必ずといっていいほど知り合いの駐在員に出会うそうだ。
神田橋は定食ランチも人気で、昼時はほぼ満席状態だという。1日10食限定の「神田橋弁当」(260元)もあっという間に売り切れる。
単身赴任の駐在員は外食で胃袋を満たす方も多いはず。神田橋は栄養バランスのいいメニューが充実している。仲間で来るもよし、ふらっと一人で立ち寄るもよし。ひと仕事終えて、「おふくろの味」が恋しくなったときに足を運びたい店だ。
取材/ワイズコンサルティング・七沢愛果
「神田橋」
住所:台北市一江街41号
(南京東路二段と長春路の間)
電話番号:02-2542-6085
営業時間:昼11時30分~14時
夜18時~22時
(ラストオーダーは21時半)