第9回は台南市にある「胡椒蝦」の店「北海岸 活蝦之家」をご紹介します。案内役は台湾艾迪科精密化学(台湾ADEKA)の石原裕三董事長兼総経理です。
石原董事長
高速鉄道に乗って初めて訪れた台南の目的地は、パネル産業の集積する南部科学工業園区(南科)と台南科技工業区。古都・台南のイメージとは無縁の1日を過ごした後、最後に寄ったのがこの店だった。台南でパネルメーカー向けの化学材料を生産する石原さんに台南の「ちょっといい店」を伺った。胡椒蝦はアルミ製の壺の中でエビと薬草、コショウなどを煮立てる海鮮料理で、台南が発祥の地という。がぜん興味が湧いてきた。せっかく古都に来たので、地元の伝統料理を味わうことにした。
オーダーを石原さんにお任せする。まず最初に登場したのは、「野蓮」と呼ばれるスイレン科の細長い野菜。初めていただいたが、かみごたえたっぷりでシャキシャキ感がたまらない。
北海岸は台南の「台南大億麗緻酒店」から近いこともあり、石原さんは出張者や知人がこのホテルに泊まる際は必ず連れて来るという。特に日本からの出張者にとって、庶民的な雰囲気の店は新鮮に映るそうだ。
台南名物の胡椒蝦
お待ちかねの胡椒蝦が出て来た。壺の縁にエビがびっちり並んでいる。石原さんにエビの殻のむき方を丁寧に教えて頂いた。コショウの味がぴりっと効いたエビと、台湾ビールとの相性は最高だ。
どうぞどうぞ、と勧められるままにエビにしゃぶりつく。壺の縁にしがみつくエビが残り1匹になったところで、ふと石原さんの皿に目をやると、抜け殻が1匹分しかない。「あの、最後の1個をどうぞ」と言うと、「私、実はエビアレルギーなんです」との答え。エビを食べるとじんましんが出るそうで、いつも人を連れてくるときは1匹で我慢するそうだ。料理は胡椒蝦を含む6品で840台湾元(約2,500円)だった。
「ちょっと待ってて」と石原さんが席を立つ。戻ってきたときは、百香果(パッションフルーツ)とカットされたスイカを手にされていた。食後のデザートを隣の果物屋で調達してきてくれたのだ。百香果から放たれる南国の香りが辺り一面に漂う。石原さんは台南で初めて百香果を口にしたとき「こんなにおいしいものがあるのか」と感動したという。パッションフルーツの種にはビタミンCが豊富に含まれているので、かみ砕いて食べるといいそうだ。
石原さんは台南の大学で日本語の特別講師も務め、前回は台南の歴史を日本語で学生に講義した。意外に台南の歴史を知らない若い学生に「灯台下暗しとはこういうことです」と教えた。石原さんと学生の交流の話を通じて、古都の温かい人情が伝わってきた。
取材/ワイズコンサルティング・七沢愛果
「北海岸 活蝦之家」
住所:台南市夏林路1之3號
(台南大億麗緻酒店から徒歩5分)
電話番号:06-222-5959
営業時間:午後5時半~午前4時(水曜定休)