第11回は日本料理の居酒屋「日本食堂」をご紹介します。案内役はKPMG台湾の久保田裕・日本業務組顧問です。
久保田顧問(左)と石井さん(右)
日本食堂は、台北市の信義路五段から少し南に下り、家具店の立ち並ぶ文昌街の近くにある。軒先のちょうちん5つの煌々(こうこう)とした明かりが目印だ。のれんをくぐると、「いらっしゃい」と威勢のいい声とともに、はちまきを巻いた大将の石井光晴さんが笑顔で現れた。店内には演歌が流れ、だるま、祭の文字が入った手拭い、歌舞伎絵のたこなどが飾られ、まさに日本の雰囲気だ。
メニューには、空揚げやトンカツ、エビフライといった懐かしい定食メニューが並ぶ。また、秋田産の新米「あきたこまち」を使った冬季限定のきりたんぽ鍋や、カルビうどん、和風キムチチャーハン、カルビクッパなど韓国風のメニューも見受けられる。それもそのはず、石井さんは秋田出身で、5年前まで栃木で焼き肉屋を経営していた経歴をお持ちだからだ。
石井さんのお薦めはモツ煮込みと空揚げ。それぞれ定食メニューも人気だ。メニューには載っていないが、ハンバーグやオムライス、広島産のカキフライなどもあり、和洋中の料理を楽しめる店なのだ。
「おいしい、安い、速い」にこだわる
久保田さんは來台半年で、前任の日本人から「日本食堂」を紹介してもらった。「安くてうまい」と気に入り、住まいからも近いこともあって、週末などに夫人と一緒に来店することが多い。今回注文したのは、空揚げ(140元)、サンマ(110元)、野菜炒め(120元)、カクテキ(60元)、豚足(150元)。空揚げはテーブルに並んだ瞬間から香ばしい香りが広がった。添えてあるキャベツの千切りのドレッシングやマヨネーズもすべて手作り。久保田さんは大好物であるサンマを尻尾まできれいに平らげた。野菜炒めもボリューム満点で、大将の心意気が伝わってくる。
量も納得の空揚げ
日本食堂は開業5年。石井さんはスタート時から「おいしい、安い、速い」の3点にこだわり続けてきた。最初は、台湾人客から「しょっぱい」と言われることもあったが、日本の味付けをかたくなに守り続けている。お腹を空かせたお客さんを待たせたくないと、オーダーを受けたら直ちに調理することがモットーで、確かにどの料理もテーブルに運ばれてくるまでが速かった。
大々的な広告は打っていないが、口コミを頼りに来店客がじわじわと増えてきた。日本人が集中するエリアから遠いこともあって台湾人の常連客が多い。
おいしい、安い、速いの3点に加え、大将のきっぷのいい人柄に魅せられる客は筆者だけではないはずだ。
(取材/ワイズコンサルティング・七沢愛果)
日本食堂
住所:台北市通化街19巷3号1F
電話番号:02-2700-9425
営業時間:午前11時半~午後2時
午後6時~10時(月曜定休)