網焼きの店「鷹堡」は台北市松江路沿いの小道を少し入った場所にあり、思わず見過ごしそうになるほど目立たない。創業16年だが、店に看板を掲げたのはつい最近のことだ。石川さんが店に来るまで、オーナーの連さんにつたない中国語で質問を投げ掛けると、「メニュー?そんなものないよ」「閉店時間なんてない。お客が帰ったときがその時だ」など無愛想な答えが帰ってきた。日本で言うところの「頑固おやじ」に通じるものがある。
石川総経理(左)とオーナーの連さん
お薦めを訊くと、「もちろん全部に決まってるだろ」と目で語るおやじさん。羊肉、 牛肉、豚肉、海鮮の順に網焼きで焼いていくという。たれはニンニクしょうゆとからしベースの2種類で、スープ、サラダはお代わり自由だ。
石川さんが来店。さっそく網焼きの上に羊のあばら肉が乗り、焼き上がるとほど良い厚さに切っていく。筆者は羊独特の匂いが苦手だが、ここの肉は臭みがほとんどない。
焼き加減はミディアムレアで、口の中に入れると肉汁がしたたり落ちる。豪快に肉にかぶりつく石川さんの食べっぷりも見事だ。石川さんは台湾人の友人と初めて来店した後、出張者らを連れて来るようになった。日本から遊びに来たお嬢さんにも大好評だった。
羊のあばら肉
続いて牛肉。中央が赤みがかった焼き加減で、しょうゆだれに合い、ビールも進む。次は豚肉だ。豚肉は肩のわずかな部位からとれる肉を使っており、しなやかな筋肉をイメージさせる弾力性とほどよい脂身が特徴だ。たれをつけずそのまま食べてもおいしい。
新鮮な素材と焼き加減に「うまい!」
3種類の肉を満喫した後、おやじさんがにやりと笑い、「あるもの」を勧めた。最初は中国語の説明を聞いても何のことかさっぱり分からなかったが、ジェスチャーでわれわれに説明する。鶏の「睾丸(こうがん)」だった。「これはうまいぞ。男性は精力が漲り、女性は肌にいい」という。筆者はもちろん、石川さんも口にするのは初めてだ。睾丸3つを串刺しにして、網焼きで丁寧に焼く。熱いので一口食べたら、「はー」と息を吐きなさい、と指導するおやじさんとのやり取りも面白い。味付けは塩コショウと白酒。
食べてみると白子のような食感で、あっさりした味だ。「これはうまい!」と石川さんは絶賛。おやじさんが誇らしげにうなずく。続いて日本産の大ぶりのホタテが網焼きの上に乗る。塩コショウのシンプルな味付けが、甘みを引き立てる。
最後は「氷魚」だ。おやじさんは「エビの味に近い」というが、石川さんに言わせると「かますやタラの味に近い」。レモンをたっぷりかけていただく。
お勘定は2人で4,400台湾元だった。酒類はビールのほか、ワインも充実しているそうだ。
出てきたすべての網焼きに共通するうまさの理由は、「素材の新鮮さと焼き加減」だと石川さんと結論づけた。
アロハシャツを着た職人気質のおやじさんの人柄も味がある。店の調度品や器に飾り気はないが、味は保証付き。「うまい!」を連発すること請け合いだ。
(取材/ワイズコンサルティング 七沢愛果)
鷹堡
住所:台北市松江路160巷2号1楼
電話番号:02-2511-2288
92-2568-1347
営業時間:昼 午前12時半~(4人から)
夜 17時~
氷 魚